看護師の仕事内容とは?仕事内容や向いている人、なる方法を紹介

超高齢社会の日本において、看護師の需要は右肩上がりに増えています。医療現場で働いたことがない社会人が看護師を目指すには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか?看護師と准看護師との違いや、看護師に必要な資質についても解説します。

看護師の仕事内容は?

メモを取る医療従事者

(出典) photo-ac.com

看護師は、いつの時代も安定した需要がある職業です。かつては、「看護師=女性の仕事」と見なされていましたが、近年は看護師を志望する男性も増加傾向にあります。

そもそも、看護師とはどのような仕事をする人なのでしょうか?仕事内容や、准看護師との違いを詳しく見ていきましょう。

医師の診療補助

看護師の主な業務には、医師の診療補助があります。本来薬剤師や助産師、診療放射線技師の独占業務を除く、すべての診療の補助を看護師が行うことができます。しかし医療の進歩によって高い専門性が必要となってきたため、それぞれに特化した専門職が作られました。看護師は医師の指示に基づいて、コメディカルと連携し、患者の回復を促すことも大切な診療の補助に含まれます。

外来に在籍する看護師の場合は、来院者の体調をチェックしたり、医師の診察に必要な採血、心電図などの検査を行います。がカルテ整理や生活上の注意事項の説明など、診療がスムーズに進むように、細やかな介助や対応を行います。

病棟の看護師は日々の健康観察にはじまり、各種検査、薬の管理、点滴、リハビリテーションと多岐に渡ります。また事前に受けた指示に応じて看護師の判断で薬の調整や検査を行うことも、常に医師がいない病棟ならではの補助になります。

手術室の看護師(オペナース)の場合は、手術前の状態や検査状況の確認、手術前後の体調の変化や生活の制限の説明、必要な器具を事前に準備し、手術中の医師の介助を行います。医師が手術をしやすい環境を作るのはもちろんですが、患者が安心安全に手術を受け、少しでも早い回復を支援することがが主な役割になりますです。

ただ単に医師の指示に従うだけでなく、「医師の診療方針」に合わせて先読みをして、行動や相談を行っていく能力が求められるといえるでしょう。

療養上で必要な看護

療養上の世話は看護師の独占業務になり、主に病棟勤務の看護師が行います。医師の診療方針から看護計画を作り、適切な看護を患者に提供するのが役目です。日勤と夜勤にシフトが分かれているケースが大半で、24時間体制で入院患者をサポートします。業務内容の一例を見てみましょう。

  • 食事や排せつの介助
  • 着替えや清拭、入浴の介助
  • 病室内の環境の調整、整備
  • 入院中、退院後の生活に関する指導

代表的な看護業務の多くは診療の補助に当たり、療養上の世話は医師の指示を受けずに、看護師の判断で行える業務になります。手術や治療をすれば患者のすべてが回復するわけではなく、退院後の生活を考えて、自立した生活を送れるように援助することが欠かせません。

また「いつ回復できるのだろうか」「病状が悪化したらどうしよう」という不安を抱えている患者・家族の話に耳を傾け、心の支えになることも看護師の重要な仕事といえるでしょう。

少子高齢化に伴い、近年は病院の外で活躍する看護師も増えています。介護施設・訪問看護ステーション・在宅医療の現場でも、看護師は引く手あまたです。

准看護師との違いもチェック

看護師は、「看護師(正看護師)」と「准看護師」に大別されます。両者の仕事内容はほとんど変わりませんが、免許の発行元や求められる能力のレベルが異なります。

看護師は、国家資格の1つです。合格者には、厚生労働大臣から免許が与えられます。

一方の准看護師は、看護師の不足を補うために誕生した職業です。都道府県知事免許に該当し、看護師よりも資格取得のハードルは低めです。

看護師は自らの判断で看護業務が行えるのに対し、准看護師は医師または看護師の指示を受けた場合にのみ業務を遂行します。

看護師は給与面でも優遇されるため、准看護師から看護師へのキャリアアップを検討する人も少なくないようです。

参考:看護業務基準|公益社団法人 日本看護協会

看護師ができない仕事もある?

パソコンを前に話をする看護師

(出典) photo-ac.com

看護師は看護のプロとして、さまざまな業務を一手に引き受けます。ただし、できる仕事とできない仕事が明確化されており、緊急時を除き、業務の範囲はあくまでも医師の補助と療養上の世話に限られます。

医療行為そのものは業務外

医師法の第17条には「医師以外の者が医業をなしてはならない」との記載があります。看護師・准看護師が医療行為を行った場合、3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処される恐れがあります。

ここでいう医業とは、医学的判断・技術を必要とする行為のことです。医師免許のない者が独断で医療行為を行えば、誤判断・技術力の不足により相手が死に至る可能性があるでしょう。

保健師助産師看護師法では、臨時応急の手当が必要なケースなどを除き、看護師の業務範囲を「診療の補助」と「療養上の世話」に限定しています。

なお、特定行為研修を受講して専門的な知識・技術を身に付けた看護師は、「特定行為」と呼ばれる高度な医療補助が行えることも覚えておきましょう。以下は特定行為の一例です。

  • 経口用気管チューブなどの位置調整
  • 人工呼吸器からの離脱
  • 一時的ペースメーカーの操作・管理

参考:
第17条|医師法|e-Gov法令検索
第5条・第37条|保健師助産師看護師法
特定行為とは|厚生労働省

看護師のやりがい

患者と話す看護師

(出典) photo-ac.com

看護師には、心身のタフさが求められます。業務は多忙を極め身体的にもハードですが、「この仕事をやっていてよかった」という充足感が大きいのも事実です。看護師がやりがいを感じるのは、どのような瞬間なのでしょうか?

患者・家族を精神面から支えられる

病気・ケガで来院する人の多くは、病状・治療に対する不安を抱えています。

患者を身体的に看護するのはもちろんのこと、患者やその家族を精神的に支えてストレス・苦痛を軽くするのも、看護師の重要な使命といえるでしょう。

とりわけ長い闘病生活を送っている人や、大きな手術を控えている人にとって、看護師の存在は大きなものとなります。家族や医師に話せない不安・悩みを、打ち明ける患者も少なくありません。

「あなたがいてよかった」という言葉をもらったとき、やりがいを実感する現役看護師は多いようです。

患者からの笑顔・感謝の言葉

看護師にとっての原動力は、患者の笑顔・感謝の言葉です。医療行為を行うのはあくまでも医師ですが、看護師の献身的なサポートがなければ、病気・ケガを乗り越えられない人もいます。

特に病棟看護師は、小さな変化・異常を見逃さないように気を配り、24時間体制で患者のケアをします。一刻一秒を争う緊張感の中で、業務をこなさなければならないケースもあるでしょう。

患者が順調に回復し、「今までお世話になりました」「一番つらい時期を支えてくれてありがとう」と言って笑顔で退院していくことは、今までの苦労が報われる瞬間といえます。

給与面で満足しやすい

「令和3年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均給与(男女)は443万円です。

「令和3年度の賃金構造基本統計調査」における看護師の平均給与(企業規模10人以上)は約480万円で、給与所得者の全体平均よりも高い結果となりました。

高齢化や健康寿命の延長に伴い、多くの医療現場は慢性的な看護師不足に陥っています。人材不足の環境で働く場合は大変さも当然ありますが、長く働き続けられる可能性が高いでしょう。

また経験を積めば、「認定看護師」や「専門看護師」などの上位資格を獲得する道が開かれます。自分の努力次第でキャリアアップ・昇進が目指せるのも、看護師の大きなメリットでしょう。

参考:
令和3年分 民間給与実態統計調査|国税庁
賃金構造基本統計調査 3-sanko 【参考】職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)(役職者を除く) | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

看護師に向いている人の特徴

消毒作業をする女性

(出典) photo-ac.com

看護師には、向き・不向きがあります。心身のタフさが求められる職業であり、人によっては長続きしないケースもあります。看護師に向いているのは、どのようなタイプの人なのでしょうか?

協調性が高く、コミュニケーション能力がある

医療現場ではさまざまなスタッフが情報を共有し、業務を分担するチームプレーが基本です。協調性とコミュニケーション能力がなければ、看護師としてやっていくのは難しいかもしれません。

医師・看護師仲間・医療スタッフ・患者・患者の家族など、日々多くの人と関わるため、人と接するのが苦にならない人が向いています。

また、看護師は医師・患者の間を取り持つ仲介役でもあります。患者から不安・悩みを聞き出して医師につなげたり、不安を和らげたりできる人は、看護師としての素質が備わっているといえるでしょう。

体力に自信がある

いくらコミュニケーション能力に長けていても、体力・気力に自信がなければ、看護師の仕事は務まらないといっても過言ではありません。

看護師の業務は交代制が基本で、日勤と夜勤が交互に回ってきます。生活が不規則になりやすい上に、立ち仕事がメインなので、体力がない人は「仕事がきつい」と感じるかもしれません。

命を扱う職業柄、患者の死にも向き合わなければならず、メンタルが強くない人はストレスが積み重なる可能性があります。

ただし、体力・気力は日々の業務で鍛えられていくものです。適応能力がある人は、1年、2年と勤務するうちにハードな業務にも慣れてくるでしょう。

判断力・向上心がある

医療の現場は、一刻一秒を争います。直接の医療行為は行えないにしろ、看護師の判断力が試されるシーンは少なくありません。

状況がうまく判断できなかったり、優先順位を誤ったりすれば、患者を命の危険にさらすことになるでしょう。物事を正しく捉えて、機敏に行動できる人は、看護師の素質があるといえます。

また、言われたことだけをこなすのではなく、自ら学ぼうとする向上心も欠かせません。現代の医学は日進月歩で発展を続けているため、古い知識・経験に頼るだけでは、患者に最良のケアを提供できないのです。

看護師になる方法もチェック

カルテを書く女性

(出典) photo-ac.com

近年は看護師の人手不足が顕著ですが、誰もが容易に看護師になれるわけではありません。「将来的に看護師を目指したい」という人は、国家試験に合格するための学習計画を立てるところからスタートしましょう。

看護師免許の取得が必須

看護師になるには、看護師国家試験に合格し、看護師免許を取得する必要があります。

看護師国家試験は年に1回で、文部科学大臣が指定する学校や、都道府県知事が指定する看護師養成所を卒業した者などに受験資格が与えられます。

独学では試験が受けられないため、これから看護師を目指す人は学校を探すところから始めましょう。

参考までに、2022年2月に実施された「第111回看護師国家試験」の合格率は「91.3%」です。大学・専門学校でしっかりと勉強すれば、社会人でも合格は十分可能です。

参考:
看護師国家試験の施行|厚生労働省
第108回保健師国家試験、第105回助産師国家試験及び第111回看護師国家試験の合格発表|厚生労働省

学校の種類

看護師国家試験を受けるには、文部科学大臣や都道府県知事が指定する学校で、必要な課程を修了しなければなりません。准看護師の免許を保有しておらず、かつ高卒以上の人には以下のような選択肢があります。

  • 看護大学(4年)
  • 統合カリキュラムによる看護専門学校(4年)
  • 看護短期大学(3年)
  • 看護専門学校(3年)

看護短期大学では、看護の知識のほかに一般教養科目の履修が可能です。ただし、3年制を敷く看護短期大学は、全国に数えるほどしかありません。

中卒の場合は、5年一貫の看護師養成課程校に入学する手があります。高等学校の看護科(3年)と看護専攻科(2年)のカリキュラムを合わせたコースにより、最短で受験資格を取得できるのが特徴です。

なお、看護大学から大学院に進めば専門分野を極められますが、現場に入る時期は遅れます。

看護師の国家資格に関していえば、どのルートで取得してもその価値は変わらないため、「いつから働きたいのか」を明確にした上で学校を選ぶことが重要です。

社会人が看護師を目指すなら

高卒以上の学歴がある社会人の場合、看護専門学校・看護短期大学・看護大学のいずれかに通うのが一般的です。看護学校の中には「社会人入試制度」を設け、学力試験の負担軽減を図るところもあります。

ただし、ほとんどの学校は全日制のため、入学できたとしても仕事と学業を両立させるのは困難でしょう。

仕事を辞めるのが難しい人は、最初に「准看護師学校」に通い、准看護師の資格を取ることをおすすめします。在学年数は2年で、全日制・定時性・通信制から選択ができます。

准看護師が看護師になるには、看護師学校養成所(2~3年課程)を修了した上で、看護師国家試験に合格しなければなりません。看護師学校養成所は、全日制・定時制・通信制から選択できるため、仕事と学業の両立が可能です。

大変な仕事だからこそやりがいも十分

笑顔の看護師

(出典) photo-ac.com

看護師は、身体的にも精神的にもハードな仕事ですが、その分やりがいも報酬も十分といえます。需要が景気に左右されないため、安定した働き方ができるでしょう。

看護師になるルートは、1つだけではありません。准看護師や看護師の見習いとして経験を積む方法もあり、「自分は未経験だから」「学歴がないから」といって諦める必要はないといえます。

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藤澤一馬
【監修者】All About 看護師 / 在宅介護と生活設計ガイド藤澤一馬

医療・お金・法律分野における三種の専門資格取得。医療、介護現場の生の声に応える、本当に知りたい情報を発信。企業、個人への医療・介護教育にも取り組む。
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