理学療法士が携わる仕事内容は、「検査測定・評価」「運動療法」「物理療法」「調査・連携」の4種類です。これらの仕事を、どのような場で行うのでしょうか?理学療法士に向いている人の特徴や、理学療法士の年収も見ていきましょう。
理学療法士の仕事内容とは
理学療法士は、リハビリを行い患者の自立をサポートするのが仕事です。どのようなリハビリが必要なのかを見定め、プログラムに沿って実施します。
また、患者が日常生活へ戻るため、家族と連携しながらサポートすることも仕事内容の一環です。
患者の状態を確認する「検査測定・評価」
患者が、座る・立つ・歩くなどの基本動作をできるようになるには、適切なリハビリの実施が欠かせません。患者によって適切なリハビリの内容は異なるため、まずは検査測定・評価が必要です。
患者の現状を正確に把握し、どのようなリハビリを実施すれば自立した生活を送れるようになるかを検討した上で、プログラムを作っていきます。
患者自身の力で行う「運動療法」
患者の自立へ向けたプログラムの中心は、運動療法です。患者が自分で体を動かし、関節の可動域の改善・筋力の回復を目指します。自分で体を動かすことで、心臓・肺などの機能改善も期待できる方法です。
運動療法は、検査測定・評価の結果をもとに作成したプログラムにもとづき、実施します。患者1人1人に最適な運動療法を考え指導するのが、理学療法士の仕事です。
また、補装具が必要な患者のリハビリを行うときの義肢・装具の着脱や、運動時のサポートなども行います。
外的な力を用いる「物理療法」
こりや痛みなどの不快な症状をうったえたり、むくみや関節の硬さがある患者には、運動療法に加え物理療法を組み合わせることもあります。振動や圧迫刺激をはじめとする外的な力で不快感の緩和を目指す方法です。温熱・低周波治療・レーザー光線などを使用したり、牽引や超音波を利用して施術したりすることもあります。
物理療法を行うときも、理学療法士は患者の状態をよく見極めた上で実施しなければいけません。
日常生活に戻るための「調査・連携」
運動療法・物理療法は、患者が日常生活へ戻るために行われます。患者がスムーズに日常生活へ戻るには、調査・連携も欠かせません。義肢・装具・杖・車椅子などが必要であれば、適合判定や調整を行い、着脱の仕方を伝えます。
場合によっては、退院後の生活における不便を取り除けるよう、患者の自宅やその周辺の調査も実施します。通勤・通学の必要があるときには、自宅から駅までの道のりを一緒に歩き、実際に通えそうかの確認を行うこともあるでしょう。
また、患者には家族のサポートも必要です。患者家族へ介助方法を伝え、連携もします。必要に応じて、住宅環境の整備についてアドバイスすることもあるでしょう。
理学療法士に必要な資格
国家資格を取得しなければ、理学療法士にはなれません。資格取得には、どのような勉強が必要なのでしょうか?社会人になってから目指す方法も紹介します。
「理学療法士」の資格が必須
理学療法士は、国家資格です。以下の指定校で必要な知識・技術を3年以上学ぶと、受験資格を得られます。
- 4年制大学
- 3年制短期大学
- 専門学校
- 特別支援学校(※視覚障害者対象)
学校を卒業しても、国家試験に合格しなければ、理学療法士の資格は取得できません。試験は1年に1回行われ、2022年に実施された試験の合格率は79.6%でした。
合格率は決して低くはないので、しっかりと準備をすれば、理学療法士になることは夢ではないでしょう。
参考:第57回理学療法士国家試験及び第57回作業療法士国家試験の合格発表について|厚生労働省
社会人から目指す場合
社会人になってからでも、理学療法士は目指せます。年齢制限は特に設けられていないので、社会人何年目であっても理学療法士になれるでしょう。
ただし、指定校で勉強し受験資格を得た上で、国家試験へ合格しなければいけない点は変わりません。指定校へ入学するときや、国家試験を受験するときの勉強は必要です。
3年以上学校へ通うことになるため、全日制の学校へ入学するなら、仕事を調整する必要があります。働きながら資格取得を目指すなら、夜間学校を利用するとよいでしょう。
理学療法士の活躍の場
理学療法士の活躍の場は、医療機関だけではありません。ほかにも、福祉施設・スポーツ関係の施設・教育分野・一般企業などでも必要とされています。
医療機関
理学療法士の代表的な活躍の場は、医療機関です。規模の大きな総合病院で勤務すると、各診療科にかかっているさまざまな患者のリハビリに携わります。
機能改善のためのリハビリを目的とした訓練を行うほか、入院で体力が落ちがちな患者のため、体力維持を目的とした訓練を行うのが一般的です。
また、クリニックであれば、整形外科・循環器内科・脳神経外科・小児クリニックなどでもリハビリを行うことが多く、理学療法士が必要とされています。
福祉施設
理学療法士は、福祉施設でも活躍しています。勤務先になるのは、主に以下の福祉施設です。
- 介護老人福祉施設
- 身体障害者福祉施設
- 児童福祉施設
利用者ができる限り自立した生活を送れるよう、必要なリハビリを行うのが仕事です。施設の利用者は、医療機関にもかかっているケースが多いため、連携しながらリハビリを行います。
スポーツ関係の施設
理学療法士によるサポートは、フィットネスジム・プロスポーツ選手からも求められています。専用の練習メニューの作成・指導で運動能力を高め、睡眠・食事など日常生活の指導で心身のサポートを行う仕事です。
必要に応じて、ケガの予防・応急処置・リハビリなども実施します。選手の調子を整える全体的なサポート役を担っています。
また、スポーツ関係の施設以外に、大学院へ進学し研究者になったり、義肢装具・リハビリ機器などを扱う一般企業へ就職したりするのも選択肢の1つです。
理学療法士に向いている人の特徴
患者に合わせて運動療法・物理療法を行う理学療法士には、柔軟な思考や観察力が欠かせません。
患者やその家族、関係する医療機関の担当者などと、スムーズなやりとりを行うためのコミュニケーション能力も必要です。さらに、心身ともにタフであることも求められるでしょう。
柔軟な思考と観察力がある
当初計画したプログラムが、必ずしもその通り進むとは限りません。患者の状態が変化しているにもかかわらず、プログラムにこだわると、悪化させてしまう可能性もあります。
特に医療機関・福祉施設の患者には、状態が急変しやすい人もいます。必要に応じてプログラムを変化させられる思考の柔軟性や、患者の細かな変化を見逃さない観察力が必要です。
コミュニケーション能力が優れている
リハビリ期間は、長期にわたることが少なくありません。作成したプログラムに沿って患者がリハビリを続けるには、理学療法士との信頼関係が必須です。
動かすことで痛みがひどいときや、なかなかうまく動かせず投げ出したいときも、理学療法士と患者の関係性が良好であれば、励ましの言葉をかけながらうまく取り組めるでしょう。
このような良好な関係性を築くには、高いコミュニケーション能力が必要です。コミュニケーション能力は、患者の家族はもちろん、患者に関係する医療従事者・福祉従事者などと協力する上でも欠かせません。
精神面・肉体面ともにタフである
理学療法士の仕事は、精神的にも物理的にも患者を支えるものです。しっかり支えるには、心身ともにタフでなければいけません。
患者は、病気・ケガで筋力が落ちており、自身の体を十分に支えられないケースもあります。ちょっとしたことでバランスを崩し、転倒することもあるでしょう。そのようなときにサポートできるだけの体力が求められます。
また、自分の体をうまく動かせない歯がゆさや、痛みを感じるつらさから、精神的にもダメージを受ける患者は少なくありません。患者を精神的にサポートするためには、理学療法士自身の気持ちが安定している必要があります。
理学療法士の年収・キャリアパスは?
理学療法士として就職した場合、年収はいくらが目安なのでしょうか?また、理学療法士として就職した後、どのようなキャリアパスを描けるのかもチェックしましょう。
年収はおよそ400万円
「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、理学療法士の年収は約405万6,000円が目安です。
ただし、年収は勤務先によっても異なります。企業規模が大きいと、年収は若干高くなる傾向にあります。
例えば、従業員数が1,000人以上の勤務先であれば、年収の目安は約434万6,000円です。目安を参考にしつつ、希望を満たす求人を探すとよいでしょう。
参考:令和3年賃金構造基本統計調査(3-sanko)|e-Stat
より高い専門性を身に付ける
理学療法士のキャリアパスには、「スペシャリスト」と「マネジメント」の2種類の道があります。
理学療法士として現場で患者に関わり続けるなら、スペシャリストとして自身の専門性を高め続けていきましょう。
さまざまな患者のニーズに対応したり、新しい技術を取り入れたりするには、知識・技術のブラッシュアップが欠かせません。
目の前の患者へ適切なプログラムの作成・指導を行うために、絶えず学びステップアップしていく姿勢が必要です。
一方のマネジメントの道は、組織を管理するキャリアパスです。
主任・課長・所長などとして活躍するには、経理・人材管理などの知識が必要となります。理学療法士として現場で働くのとはまた違う知識・スキルを、身に付けていかなければなりません。
人のためになる仕事を目指してみよう
患者が自立した生活を送れるよう、リハビリをサポートするのが理学療法士の仕事です。座ったり立ったりできるよう訓練するのはもちろん、自宅で暮らしやすいよう環境整備のアドバイスや、家族による介助のポイントを伝えます。
また、自宅から問題なく通勤・通学できるか、付き添って周辺の確認を行うこともあるでしょう。理学療法士は病院・福祉施設以外に、フィットネスジム・プロスポーツ選手からも求められています。
病気・ケガからの回復や、スポーツ選手の状態調整などのサポートを通して、人の役に立てる仕事です。理学療法士への転職を目指すなら、国内最大級の求人サイト「スタンバイ」をチェックしましょう。
身体と心の運動に取り組み、予防医学の実現を目指す予防運動療法講師。理学療法士として医療・介護分野にて臨床経験を積む中で、病気になってからよりも、病気にならないようにする事の重要性に気付き、予防医学の実現のためにヨガとピラティスのスタジオを立ち上げる。自らまとめ上げたファンクショナルローラーピラティス®︎やエボリューションウォーキング®︎の指導者育成をはじめ、執筆活動、各種講演、日々の運動指導に携わる。
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