教員の初任給はいくらぐらい?校種ごとの平均額と給与事情をチェック

教員採用試験の倍率が下がっている現在、教員になるチャンスともいえます。教員になって最初にもらう初任給の金額はいくらぐらいなのでしょうか?校種ごとの初任給の平均はもちろん、ボーナス・残業代などの給与事情を解説します。

公立学校教員の初任給は学歴・地域で異なる

女性教師

(出典) photo-ac.com

教員には公立学校教員・私立学校教員などがあり、運営元が異なります。公立学校教員が地方公務員に属するのに対し、私立学校教員の扱いは民間企業と変わりません。

私立学校教員の場合、初任給も運営元の学校法人によって異なるため、この記事では公立学校教員の情報を中心に紹介します。

小・中・高校教員の平均額は大卒で21万円ほど

同じ公立学校教員であっても、小学校・中学校教員と高等学校教員では初任給の額が異なります。また、大学卒業・短大卒業などの学歴の違いによって初任給の額が異なる点にも、注意が必要です。

総務省の調査によると、2021年度の小学校・中学校における初任給の全国平均額は、大学を卒業した人で20万9,495円だと分かっています。

一方、高等学校教員の場合は20万9,531円で、初任給がやや高く設定されているもののそれほど差はありません。

なお、短大卒業の場合には小学校・中学校が18万6,520円、高等学校は18万4,041円と、大学を卒業した人と比べて平均額が2~3万円ほど下がります。

参考:令和3年 地方公務員給与の実態|総務省

私立教員の初任給は全職種の平均を参考に

私立学校の初任給は学校によって異なるため、公立学校のように明確な平均額を示すことは厳しいといえます。そのため、民間企業における初任給の平均額を参考にして公立学校との違いを解説しましょう。

厚生労働省が2019年度に行った調査によると、民間企業における初任給の平均額は大学卒業の人で21万2,000円です。短大卒業の場合でも18万3,900円となっており、公立学校教員がもらう初任給の平均額とそれほど違いはありません。

参考:1 学歴別にみた初任給|厚生労働省

基本給以外に地域手当が加算される場合も

初任給には基本給以外に、通勤手当・住宅手当などの手当が含まれています。とくに注目したいのは、物価の高い都市部などに勤務する教員に加算される「地域手当」です。

基本給が同じ教員であっても、物価の高い地域と低い地域では経済的な負担が変わります。このような勤務地による支出の差を埋める目的で支給されるのが、地域手当です。

2021年度の時点で、26.1%の地方公共団体が地域手当を加算していることが分かっています。なかでも東京都は、国の基準よりも地域手当の支給率が高くなっています。

なお、地域手当は公務員のほか、私立学校教員を含む民間企業でも採用されています。

参考:令和3年度 地方公務員給与の実態|総務省

公立学校教員の給与事情をチェック

給料袋と電卓

(出典) photo-ac.com

1カ月の給与を表す初任給だけでは、公立学校教員の給与事情が見えにくいのも事実です。次は公立学校教員の給与事情を、経験年数・ボーナス・残業代の視点から解説します。

経験年数で給与がアップ

公立学校教員は地方公務員に該当するため、経験年数に応じて基本給の金額が上がります。給与の大部分を占める基本給が上がるため、長く働いた分だけ給与額がアップするというわけです。

もちろん、経験年数が上がるにつれて、任される仕事の量・責任も増加する傾向にあります。

経験年数でいくらぐらい給与額が変わるのかを、大学卒業の小学校・中学校教員の平均給与額をもとに比べてみましょう。

総務省が行った調査によると、2021年度における小学校・中学校教員の平均給与額は、在職1年未満で21万9,428円、10年以上15年未満で33万3,650円です。調査結果からも、経験年数を重ねると給与額が上がることが分かります。

参考:令和3年度 地方公務員給与の実態|総務省

年に2回のボーナス支給

公立学校教員には1年間に2回、期末手当・勤勉手当という名称のボーナスが支給されます。1回目のボーナスは6月30日ごろ、2回目は12月10日ごろに支給されるのが一般的です。

期末手当の金額は、どれだけの期間勤めているかを表す在職期間によって変動します。

例えば6月に支給されるボーナスの場合、その年の4月から働き始めた1年目の教員は在職期間がまだ短いため、通常の金額よりもボーナス額が少なくなるのが特徴です。

残業・休日出勤の報酬はなし

公立学校教員には、給与の4%に該当する「教職調整額」が支給されています。教職調整額は残業・休日出勤で発生する報酬の代わりのようなものです。そのため、公立学校教員の場合は残業・休日出勤の有無に関係なく、給与額は変わりません。

例えば1カ月の給与額が20万円の場合には、支給される教職調整額は8,000円です。1カ月の残業時間が20時間の場合、時給に換算すると400円しか支払われていないことが分かります。

なお、民間企業と同じ扱いとされる私立学校教員は例外です。私立学校は労働基準法に基づいて運営されるため、基本的に残業代・休日出勤にも手当が支給されます。

参考:
教員の手当一覧|文部科学省
公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法 | e-Gov法令検索
私立学校・学校法人の労務管理|文部科学省

公立学校教員になるためのステップ

ノートに書き込む男性

(出典) photo-ac.com

公立学校教員の初任給・給与の目安を知り、転職を検討し始めた人もいるのではないでしょうか?未経験から公立学校教員になるまでのステップを、教員免許・採用試験・現場経験に分けて解説します。

大学・短期大学などで教員免許を取得

公立・私立にかかわらず、学校現場で教員として働くためには教員免許の取得が必須です。基本的に教員免許は、教員養成課程のある大学・短期大学などで取得できます。

働きながら教員免許の取得を目指す人は、通信制の大学を利用するのがおすすめです。通信制の大学ではキャンパスに出向かなくても、基本的には自宅で課題に取り組んで提出することを中心に教員免許の取得を目指せます。

また、小学校教員を希望する場合には、文部科学省が開催する教員資格認定試験を受験する方法もあります。筆記試験を行う1次試験、面接などを行う2次試験の両方に合格すると、小学校教諭2種免許状の取得が可能です。

参考:
教員資格認定試験:文部科学省
令和4年度 小学校教員資格認定試験 受験案内|独立行政法人教職員支援機構

都道府県が行う教員採用選考試験に合格

公立学校の正規教員になる条件は、都道府県などで行われる教員採用試験に合格することです。

試験の日程・内容は都道府県などで違い、なかには年齢制限を設けている自治体もあります。都道府県によって多少の違いはあるものの、1次で筆記試験、2次で面接試験・実技試験を行うのが一般的です。

都道府県の管轄なので、民間企業のような県をまたぐ転勤制度はありません。例えば引っ越しなどで別の都道府県で働きたい場合には、引っ越し先の県の採用試験を受験しなければならないので注意が必要です。

なお、私立学校教員を志望する場合は、運営元の学校法人が独自に行う採用試験などを受けることになります。

講師をしながら現場経験を積む方法も

公立学校における教員採用試験の倍率は下がっているものの、小学校が2.6倍なのに対して中学校は4.4倍、高等学校は6.6倍と、校種によって差があるのも事実です。

さらに受験する科目によっても合格の難度が変わるため、講師をしながら現場経験を積むのも1つの方法です。

自治体の教育委員会に講師として登録すると、学校で欠員が出たタイミングで連絡がきます。面接などを行い、問題がないと判断されると採用されるのが一般的です。

講師には正規教員のようにフルタイムで働く「常勤講師」と、週に○時間などの契約で教える「非常勤講師」があります。講師になれば現場経験を積める反面、仕事と勉強の両立に苦労する人も少なくないため注意しましょう。

もちろん私立学校にも常勤講師・非常勤講師があり、民間企業における契約社員・アルバイトにあたります。

参考:令和3年度教員採用選考試験実施状況|文部科学省

教員の仕事に生かせるスキル

パソコン作業をする男性

(出典) photo-ac.com

教員の仕事は幅広いため、異業種の経験を生かせる場面も少なくありません。最後に、教員の仕事に生かせるスキルを2つ紹介します。

ITの活用能力

小学校でプログラミング教育が必修化されたこともあり、学校現場においてもITの活用能力が重視されているのも事実です。

もちろん中学校・高等学校も例外ではなく、中学校は技術・家庭科で、高等学校は情報科でプログラミングの授業が行われます。

さらに成績の管理や、分かりやすい授業をする上でもITの活用能力を生かすことが可能です。ITを活用できる人材は校内でも重宝される傾向にあるので、活躍の場を広げるチャンスにもできるでしょう。

参考:小学校プログラミング教育の趣旨と計画的な準備の必要について|文部科学省

参考:教師に求められる資質能力の再整理|文部科学省

コミュニケーション能力

授業のスキルとともに、教員に求められるのはコミュニケーション能力です。授業を行う上では、児童・生徒とのコミュニケーションが欠かせません。また、小学校だけではなく、中学校・高等学校でも学級担任を任される可能性は十分に考えられます。

クラスの運営には、保護者に児童・生徒の様子を伝えて不安を取り除いたり、学年の教員と足並みをそろえて授業を行ったりするスキルも求められます。

さらに、授業の準備や雑務に追われている教員は少なくないため、ほかの教員から教えてもらうのを待つのではなく、分からないことを自分から質問する積極性も大切です。

初任給を把握して教員になるかを検討しよう

教師の後姿

(出典) photo-ac.com

教員の初任給は公立・私立を問わず、大学卒業で21万円ほどです。公立学校の教員は地方公務員に分類されるため、経験年数に応じて給与額が上がります。

一方で公立学校教員には教職調整額があるため、残業・休日出勤による報酬は支払われません。

民間企業と同じように労働基準法に即して運営する私立学校では、残業代や休日出勤の手当が支払われるのが一般的です。

また、給与額も運営元によって違うため、公立学校教員よりも給与額が高くなる可能性もあります。スタンバイには私立学校教員の求人が多数掲載されています。求人情報をチェックして、教員に転職するかをじっくりと検討しましょう。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら

 

鈴木邦明
【監修者】All About 子育て・教育ガイド鈴木邦明

教師歴22年の小学校や幼稚園・保育園に精通した子育て・教育の専門家。神奈川県、埼玉県の公立小学校に22年勤めた後、短大、大学での教員養成、保育者養成に移り、現在に至る。現在は、大学での講義を中心に、保護者向けに子育て・教育、教員向けに授業方法・学級経営などのテーマで執筆、講演などに幅広く活躍中。
All Aboutプロフィールページ
公式サイト

著書:
子どもの心と体のストレスを緩和する リラックス学級レク75
オンライン、ソーシャルディスタンスでできる 学級あそび&授業アイスブレイク