社会福祉士資格を生かせる仕事は?ダブルライセンスが取りやすい資格も

国家資格として知られる社会福祉士の資格は、どのような業界で生かせるのでしょうか?社会福祉士の資格を生かせる仕事を、介護・医療業界から一般企業まで幅広く紹介します。さらに、社会福祉士とのダブルライセンスにおすすめの資格も取り上げます。

社会福祉士資格は介護・医療業界で生かせる

車いすを押す社会福祉士

(出典) photo-ac.com

社会福祉士の資格を生かして、介護・医療などの現場で働くことが可能です。まずは、社会福祉士として活躍できる介護・医療の仕事を、勤務先の例と併せて紹介します。

高齢者・障がい者などの施設で利用者を支援

社会福祉士の多くが働いているのは、高齢者・障がい者などが利用する施設です。通所型のデイサービスのほか、入所して生活をするグループホームなども該当します。社会福祉士が支援する対象は、体・心・経済などでハンデを抱えた高齢者・障がい者などです。

デイサービス・グループホームに入所する前に自宅を訪れたり、契約のサポートをしたりする場合もあります。もちろん、入所後に利用者から相談を受け、必要に応じて医療機関などと連携して支援にあたるケースも少なくありません。

医療ソーシャルワーカーとして病院などに勤務

病院・クリニックなどで働く医療ソーシャルワーカーも、社会福祉士の資格が生かせる仕事です。病気・ケガなどで療養している患者や家族を対象に、相談室や病棟などで面談を行って心理的な負担をやわらげます。

経済的に苦しくて入院費の支払いが難しい場合には、自治体などから援助が受けられるようにサポートをする場合もあります。もちろん、退院・社会復帰・受診などに関する支援も例外ではありません。

入院・通院の利用形態を問わず、患者や家族をサポートして負担を軽くすることが医療ソーシャルワーカーの仕事です。

地域包括支援センターで住民の生活を支援

自治体が運営する「地域包括支援センター」も、社会福祉士が活躍できる場所といえます。地域包括支援センターは高齢者の暮らしをサポートする施設で、社会福祉士以外には保健師・主任介護支援専門員などが在籍しています。

地域包括支援センターにおける社会福祉士の主な仕事は、高齢者からの介護保険・要介護認定などに関する相談への対応です。

そのほか、地域住民からの高齢者に関係するトラブル相談を受け、解決に向けて動く場合もあります。

参考:地域包括支援センターの概要|厚生労働省

ヤングケアラーの支援にも活躍

テレビや、ネットニュースなどで「ヤングケアラー」という言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?ヤングケアラーとは、大人がするような家事・家族の世話・介護などを日常的に行っている18歳未満の子どもを指した言葉です。

親の代わりに幼いきょうだいの世話をしていたり、精神的な病気を患っている家族の看病をしていたりと、さまざまなヤングケアラーの存在が社会的にも問題視され始めています。

実際に、社会福祉士・精神保健福祉士などがヤングケアラーからの相談に対応する専用窓口を設置している自治体もあるほどです。

ヤングケアラーの問題は少子高齢化とも深く関係しているため、高齢の親を自宅で介護する18歳未満の子どもはさらに増えていくと考えられます。

子どもらしい生活をできずにいるヤングケアラーの支援に、社会福祉士の専門性が求められる可能性もあるでしょう。

参考:ヤングケアラーについて|こども家庭庁

公務員として地域・児童福祉に携わる方法も

公務員の女性

(出典) photo-ac.com

社会福祉士の資格を生かして公務員になり、自治体が行う地域福祉・児童福祉に携わる方法もあります。公務員として社会福祉士が活躍できる施設の種類は大きく分けて2つです。

自治体の福祉事務所などに勤務

社会福祉士の資格を所持していたとしても、公務員として働くためには公務員試験に合格する必要があります。公務員試験では幅広い知識を問う筆記試験・面接などが行われ、最終的な合否が決定されます。

国家公務員における社会福祉士は、国家公務員総合職・裁判所総合職・法務省の専門職員などとして採用されるのが一般的です。一方、地方公務員だと上級福祉職として採用され、自治体の福祉事務所などに配属されます。

国家公務員はより高い専門性が求められるため、公立の福祉施設・保健施設で働きたい場合には地方公務員試験の受験がおすすめです。

児童福祉司として児童相談所で働く

社会福祉士の資格があれば、児童福祉司として児童相談所で働ける可能性も高まります。

児童福祉司は地方公務員に分類されるため、まずは福祉職・社会福祉区分で公務員試験に合格する必要があります。さらに、児童福祉司の任用条件に該当している必要がありますが、社会福祉士の資格はそれに該当していることになります。

そのため、社会福祉士の資格があると、児童福祉司としても活躍しやすいというわけです。

参考:1.児童福祉司の概要等について|厚生労働省

企業や保育現場でも社会福祉士資格を活用

面談の様子

(出典) photo-ac.com

社会福祉士の資格が生かせるのは、介護・医療業界だけではありません。一般企業や保育の現場でも、社会福祉士の専門性が必要とされています。

社員のカウンセリング業務

社会福祉士の資格を生かし、一般企業でカウンセリング業務を行う方法もあります。企業における社員のメンタルヘルスのサポートは、社会的にも注目されている問題です。

警察庁の調査でも、2021年度の自殺者は2万人以上にのぼることが報告されています。自殺者のなかで45.0%以上を占めているのが、30~50代の働き盛りといわれる人々です。

自殺の背景には、仕事のストレス・職場の人間関係なども関係していると考えられています。そのため、社員のカウンセリングができる人材を求めている企業は少なくありません。

なお、企業によって社会福祉士の呼び名が異なる点にも注意が必要です。社会福祉士以外に、ソーシャルワーカー・生活相談員・福祉職などと呼ばれる場合もあります。

参考:令和3年中における自殺の状況|厚生労働省自殺対策推進室 警察庁生活安全局生活安全企画課

社会福祉士の資質を生かして保育でも活躍

社会福祉士の専門性は、ひとり親世帯・生活困窮世帯なども利用する保育の現場でも求められています。

また、親と子どもで生活をする核家族が増えている現代、近くに頼れる人がいない環境に大きなストレスを抱える保護者は少なくありません。

子どもが健やかに成長するためには、家庭環境のサポートも大切です。しかし、子どもたちの世話を担う保育士には、行政支援・生活支援の専門的な知識がないのが実情です。

そのため、保育の現場では、社会福祉士の専門性を兼ね備えた保育士が必要とされています。

社会福祉士とのダブルライセンスにおすすめの資格

パソコンを前に考え事をする女性

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転職へ向けて、新しい資格の取得を考えている人は多いのではないでしょうか?社会福祉士と併せて取得することで、活躍の場を広げられる資格を3つ紹介します。

精神保健福祉士

精神保健福祉士は、精神面に障害を抱えた人の支援を行うための資格です。支援する対象者が限られるため、より高い専門性が求められます。

ハンディキャップのある人を支援するという点では社会福祉士と似ているため、取得しやすい資格だといえるでしょう。

例えば、社会福祉士として登録していると、精神保健福祉士資格試験の17科目のうち11科目が共通科目として免除されます。

さらに社会福祉士の受験資格を取得する際に、「社会福祉援助技術現場実習」「相談援助実習」を履修している場合には、精神保健福祉士になるための実習時間を短縮することが可能です。

参考:精神保健福祉士について |厚生労働省

保育士

働く女性が増えている現代、保育の需要はさらに高まってきています。さらに保護者・子どもの支援においても福祉の専門知識は欠かせないため、福祉系の資格を持った保育士が求められているのも事実です。

そのため、社会福祉士を含む福祉系の資格取得者には、保育士試験の筆記科目で必要な科目から「社会的養護」「子ども家庭福祉」「社会福祉」の3科目が免除されます。受験する筆記科目の数が少なくなるため、比較的資格取得のハードルが低いのが特徴です。

ファイナンシャルプランナー・宅建

多くの人から相談を受ける社会福祉士には、ファイナンシャルプランナー・宅建の資格がおすすめです。

ファイナンシャルプランナーの資格には、難度が低い順に3級・2級・1級があります。いずれの級でも税金・生命保険・相続・ライフプランなど、お金に対する知識を幅広く学ぶことが可能です。

ただ、転職・起業の際にお金に対する専門性を証明するためには2級以上の知識が必要です。

宅地建物取引士の資格を取得すると、利用者が抱える住宅に関する悩みにも、専門的な視点からアドバイスができるでしょう。

社会福祉士は幅広い分野で活躍できる仕事

社会福祉士の女性と高齢の女性

(出典) photo-ac.com

社会福祉士の知識・スキルは介護・医療業界にとどまらず、地域や一般企業、保育現場でも必要とされています。

少子高齢化・不況・過重労働など、社会的な問題が絶えない現代において、カウンセリング業務ができる社会福祉士は貴重な存在といえるからです。

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小松俊明
【監修者】All About 転職のノウハウ・外資転職ガイド小松俊明

国立大学法人東京海洋大学グローバル教育研究推進機構教授。サイバー大学客員教授を兼務。「できる上司は定時に帰る」「エンジニア55歳からの定年準備」「人材紹介の仕事がよくわかる本」他、キャリアやビジネススキル開発に関する著書がある。元外資系ヘッドハンターであり、企業の採用や人材育成事情に詳しい。
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