受付は来客がスムーズに目的を果たすために、なくてはならない仕事です。受付がどのような対応をするかで、企業の印象が良くなることもあれば悪くなることもあります。詳しい仕事内容や、未経験でも挑戦できるのかを見ていきましょう。
受付の仕事について知ろう
受付は会社や施設への来訪者が最初に訪れる場所なので、よく「企業の顔」に例えられます。どのような仕事をするのか、詳しく見ていきましょう。
来客の対応や管理
受付の主な仕事は来訪者への対応や管理です。来客を出迎えて来訪の目的を聞き取ったり、ほかの部署への取り次ぎを行ったりします。
セキュリティの観点から「来訪目的の情報の管理」や「入館証」などを渡す仕事も、受付にとって重要な業務です。来訪者がストレスを感じないように、スムーズに対応しなければなりません。
企業によっては専用の来訪者管理システムがあり、受付の負担が軽減されている場合もあります。また、必要に応じて来訪者の送迎の手配をすることもあるでしょう。
電話やメール対応
受付担当が代表電話や代表メールアドレスへの問い合わせに対応することも珍しくありません。相手の企業名や氏名を正しく聞き取り、目的に合った部署に取り次ぎます。
どの部署が何を担当しているのかが分からないと取り次ぎに時間がかかってしまうので、業務全般に対する知識が必要です。受付のやり方だけでなく、その企業の事業内容を正しく理解していなければなりません。
メールの問い合わせ対応をする際は、レスポンスを早くすることが基本です。企業によって細かいルールは異なりますが、24時間以内に何らかの回答をするように決まっているケースが少なくありません。
問い合わせの内容が分かりづらいときは自己判断せず、相手に詳細を確認しましょう。直接対応をするときとは違い電話やメールはお互いの顔が見えないので、丁寧な言葉遣いやマナーを守った対応をすることが重要です。
会議室の予約・管理
会議室や応接室などの予約や管理も重要な業務です。電話やメールなどで予約を受け付ける際、スケジュールが被らないように適切に管理します。
予約が途中でキャンセルになったときや時間が変更になったときなどに、情報を正しく反映させないと「ダブルブッキングのミス」が起こるでしょう。
予約した人々がスムーズに利用できるように、気を配ることも重要な仕事です。会議や商談などが長引いて、次の利用者が時間通りに使えなくなる事態は避けなくてはなりません。
予約を受けるだけでなく、入室や退室の管理も行うことが一般的です。企業によっては、終了時間の10分前に連絡を入れるように決まっている場合もあります。
庶務業務
受付では備品の管理や郵便物・荷物の受け渡しなどの、庶務業務を行うことが珍しくありません。受付業務に使用するバインダー・ファイル・筆記具などはもちろん、来訪者に渡すパンフレットや資料などの管理・発注も行います。
どんな施設の受付をするかによって内容が変わり、スポーツクラブやスパなどの受付では着替えやタオルなどの管理をすることもあるでしょう。
仕事をしやすい環境を整えるためにも、整理整頓は重要です。場合によっては、「受付や会議室などの清掃」も業務内容に含まれていることがあります。
受付の仕事に向いている人
どんな仕事にも向き不向きがあり、最初から身に付いている人もいれば、努力によって近づく人もいます。受付に向いている人とはどんな人なのか、見ていきましょう。
柔軟な対応ができる
受付は来訪者が最初に訪れる場所であり、飛び込み営業や迷子などの予期せぬ来客は珍しくありません。「イレギュラーな対応」を求められることもあるので、柔軟かつ冷静に対応できる人が向いています。
急病人が出たときに救急車の手配や救護などをしなければならないこともあり、緊急時の対応マニュアルなどをしっかりとチェックしておくことも必要です。
要望によっては応えられないこともありますが、相手が求めていることを見極めて対処しなければなりません。対処の仕方を間違えると企業の評判を落とすので、できる限り丁寧な対応が求められます。
アポイントメントのない相手は取り次がないなど、その企業の決まりに従って「できないことはできない」としっかりと断れる芯の強さも必要です。
礼儀正しい受け答えができる
どんな人に対しても、礼儀正しい受け答えができる人は受付に向いています。受付に訪れる人の中には緊張している人もいますし、行くべき場所が分からず困っている人もいるでしょう。
そのようなとき、親切に対応できる人の方が、企業のイメージアップに役立ちます。正しい言葉遣いや態度ができるだけでなく、笑顔で対応することも受付に求められる要素です。
来訪者に対してぞんざいな対応をすれば、受付だけでなく企業そのもののイメージも悪くなってしまうでしょう。
人と接するのが好き
受付にはさまざまな人がやって来るので、人と接するのが好きな人に向いています。直接的な対応だけでなく電話やメールでの対応をすることもあり、人と話したり世話を焼いたりすることが好きな人にぴったりな仕事です。
都心にあるオフィスビルや大型の複合施設の受付などをする際は、毎日何百人といった単位の人々と接する機会があるので、人嫌いでは務まらないでしょう。
黙々と仕事をするのが好きな人や1つの仕事に集中したい人は、受付の仕事が苦になる可能性があります。
受付の仕事に必要なスキル
未経験の仕事に挑戦する際、どのようなスキルが必要なのか気になる人は多いはずです。受付の仕事をする上で求められるスキルには、どのようなものがあるのか見ていきましょう。
コミュニケーション能力
受付は来訪者の目的をヒアリングし必要な場所へ案内する役割を持っているので、コミュニケーション能力は必須です。必要なことを伝える力だけでなく、相手の意図をくみ取る力も求められます。
相手をリラックスさせて、話しやすい空気を作ることも重要です。笑顔を意識し、清潔感に気を配りましょう。
外国の顧客が多い企業であれば、英語を使ったコミュニケーション能力も必要です。留学経験や国際的な仕事に興味がある人なら、活躍できるでしょう。
ただし、英語が理解できるだけでなく、顧客の国の文化も理解していないとうまくコミュニケーションがとれないことがあります。
ビジネスマナー
受付も企業の一員であるため、身なり・言葉遣い・態度など、ビジネスシーンで仕事をスムーズに進めるために必要な、ひと通りの礼儀作法を身に付けていなければなりません。
自分本位ではなく相手を主軸に考えて行動する気持ちがないと、間違った行動をしてしまうでしょう。受付では言葉遣いだけでなく正しいお辞儀の仕方をマスターすることや、ビジネスでの基本となる報告・連絡・相談などをすることも必要です。
受付だからといって特別なマナーは必要なく、「社会人としての基本的なマナー」を守れていれば問題にならないでしょう。
基本的なパソコンスキル
受付では来訪者や会議室の予約などの管理をする際に、パソコンを使うことが一般的です。データ入力や文書の作成などに使う、Word(ワード)やExcel(エクセル)といった基本的なソフトの使い方を押さえておきましょう。
特に難しい操作をするわけではないので、ほとんどの場合は基本の使い方をマスターしていれば問題ありません。
来訪者を目の前にして作業したり、電話を受けながら予約確認などの対応をしたりすることもあり、難しい操作よりも素早く正確に作業できるスキルが求められます。
受付の仕事に役立つ経験は?
受付は、これまでにしていた仕事の経験を生かせる可能性がある仕事です。一見すると畑違いに思えても、応用できる仕事があるでしょう。受付の仕事に役立つ経験には、どのようなものがあるのか見ていきましょう。
接客業や事務経験
受付の仕事は接客業や事務職の経験を生かせます。相手の要望をくみ取って応える仕事は、接客業やサービス業の人が得意とする分野です。
業種を問わず仕事を通じて人と接してきた経験があるなら、十分に役立ちます。電話対応や入力業務などは事務職の人にとって身近な仕事なので、特に難しくないでしょう。
内勤が中心の事務職を経験してきた人であっても、社内の人々と円滑なコミュニケーションが取れていたのであれば、受付に必要な能力を十分に備えている可能性があります。
受付の経験がなくてもなれる?
どんな仕事であっても経験者が優遇される傾向がありますが、未経験でも受付の仕事に就けるのでしょうか。持っていると有利な資格なども紹介します。
未経験でも始められる
受付をする上で必要な資格というものは存在せず、未経験であっても十分にチャンスがある仕事だといえます。
直接人と接する機会が多いので、職務経歴だけでなく基本的なビジネスマナーを身に付けているかどうかや人柄などが重視されます。
企業にとって大切な顧客と直接接する機会も多いので、真面目で明るく親しみやすい雰囲気の人を求める企業が大半です。
未経験者の採用に積極的な企業では入社時に特別なスキルは必要なく、研修などの制度を設けて受付業務の基礎を学べるようにしていることもあります。
アピールできるスキルがあれば活用を
コミュニケーション能力やビジネスマナーなど、受付に役立つスキルを持っているなら積極的にアピールして採用を勝ち取りましょう。
受付に必須の資格はありませんが、持っていると有利になる資格もあります。例えば、基本的なビジネスマナーを身に付けていると証明するには、「ビジネス実務マナー検定」を受けるとよいでしょう。
正しい敬語の使い方や、ビジネス用語に対する理解があると評価してもらえます。合格率は2級が75%程度、1級でも30%程度とそれほど難しくありません。
上司のサポートに必要な知識やオフィスマナーを問われる「秘書検定」も、受付に必要なスキルを持っているというアピールになります。大学生や高校生で受験する人も多く、合格率は2級が62%程度、1級が34%程度です。
参考:秘書検定 受験者状況
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受付の仕事は未経験者でも挑戦できる仕事で、人と接する仕事がしたい人や接客業や事務職などで培ってきた能力を生かしたい人にぴったりです。
基本的なビジネスマナーが身に付いていており、人と話すのが苦にならない人であれば採用される可能性は高いでしょう。
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国立大学法人東京海洋大学グローバル教育研究推進機構教授。サイバー大学客員教授を兼務。「できる上司は定時に帰る」「エンジニア55歳からの定年準備」「人材紹介の仕事がよくわかる本」他、キャリアやビジネススキル開発に関する著書がある。元外資系ヘッドハンターであり、企業の採用や人材育成事情に詳しい。
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