「作業療法士はやめとけ」といわれる理由5選。向いているのはどんな人?

作業療法士は「やめとけ」といわれることがあります。それはなぜなのでしょうか。その理由ややりがい、向いているのはどんな人なのかを解説します。これから作業療法士を目指している人は、ぜひ参考にしましょう。

作業療法士が「やめとけ」といわれる理由

パソコンを前に考え事をする白衣の女性

(出典) photo-ac.com

作業療法士が「やめとけ」といわれる代表的な理由を5つピックアップして紹介します。職業によって大変なポイントはさまざまです。詳しく見ていきましょう。

給料が低い

令和3年度の賃金構造基本統計調査をもとに試算すると、作業療法士の平均年収は約426万円です。この調査結果には理学療法士のほか、作業療法士・言語聴覚士・機能訓練士の情報も含まれています。

また、国税庁の調査では、日本人全体の平均年収は443万円という結果が出ています。日本人の平均年収よりやや低い点や、昇給しにくい点が「給料が低い」と感じる原因になっていると考えられます。

作業療法士の診療報酬は時間当たりの点数で決まっており、新人でもベテランでも稼げる額に変わりはありません。

どれだけ頑張っても診療報酬以上の金額は稼げないため、頭打ちになりやすいといえるでしょう。作業療法士の人材が多く、役職者のポストが詰まっていることも、昇給しづらい背景にあります。

また看護師のように夜勤がないため、手当を狙って稼ぐこともできなくなっています。

参考:
賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 | ファイル | 統計データを探す | e-Stat
令和3年分 民間給与実態統計調査|国税庁

多忙のうえ、サービス残業することも

作業療法士の仕事には、リハビリ活動以外にも、カルテの記入をはじめとする事務作業があります。担当している患者が多いと、業務時間中はリハビリ作業に追われるため、事務作業を消化できないでしょう。

そのため、業務時間外に事務作業をこなさなければならなくなります。中には、休憩時間返上で作業をする人もいるようです。

また、「勉強会」と称した業務時間外の研修が開催されることがあり、事実上強制参加となっていることもあります。「参加しない人はやる気がない」とレッテルを貼られたくないために、仕方なく参加する人もいるでしょう。

このように多忙であることや、労働環境がよくないことも「やめとけ」といわれる理由です。

患者への対応が辛い

患者の中には、クレーマー気質の人がいることも事実です。いくらこちらが寄り添ったとしても、患者がそれに応えてくれないこともときにはあるでしょう。

実際の例としては訓練の内容を理解できず、リハビリ内容に文句を言ったり拒否したりする人もいます。作業療法士のリハビリ内容は、食事や更衣など日常の動作に基づいているため「これがリハビリなのか」と疑問に思う患者もいるためです。

そんな状況でも、プロとして辛抱強く接し、理解してもらわなければなりません。このような精神的なストレスから、気を病む作業療法士もいます。

人間関係がきつい

職場の人間関係がきついケースもあります。通常、1人の患者に対しては医師や看護師、理学療法士などさまざまな役割の人がサポートにつきます。

数人で連携を取りながら仕事を進める必要があり、関わる人が多いほど人間関係の構築は難しくなるでしょう。

それだけではなく、新人時代に十分な教育を受けられないこともあります。これには人材不足や雇用者の理解不足などの原因が挙げられます。相談できる先輩や上司がおらず、1人で悩みを抱え込んでしまう人もいるでしょう。

常に勉強してアップデートする必要がある

医療技術は日々進歩しているため、医療職である作業療法士も常に自分の知識をアップデートしなければなりません。

しかも知識のキャッチアップや自己研鑽は、往々にして業務時間外に行わなければならないことがあります。休日は1日中勉強に追われることもあるでしょう。

しかし、勉強して知識が増えたからといって、ダイレクトに給与に反映されるわけではありません。そのため、プライベートの時間を削って勉強時間を捻出するモチベーションの維持が必要なことも知っておきましょう。

作業療法士はやりがいのある職業

女性と作業療法士の男性

(出典) photo-ac.com

作業療法士の大変な部分に触れましたが、責任のある仕事であり、やりがいも大きく感じられます。やりがいを感じる部分を3つ解説するので、実際に働いたときのイメージを膨らませてみましょう。

患者の社会復帰に貢献できる

作業療法士の仕事は、病気やけがによって日常生活がままならなくなった患者の社会復帰をサポートすることです。リハビリを通じて、患者に普段通りの生活を取り戻してあげることが使命であり、社会的意義の高い仕事です。

一般的に、医師や看護師は入院中の病気やけがの治療を担当し、退院後は積極的に関与することはありません。しかし、退院後の生活に不安が残る患者もいます。そこに寄り添ってあげられるのが作業療法士です。

リハビリによって患者に笑顔が戻ったり、感謝されたりしたときには、大きなやりがいを感じられるでしょう。

自分の個性を生かせる

作業療法士は、自分の趣味や特技といった個性を生かしやすい仕事です。リハビリ内容には、手芸や料理などが含まれることがあります。そして、1つのリハビリ手法がすべての患者に通用するわけではありません。

そのため、自分の特技を生かしながら、それぞれの患者にマッチしたリハビリ手法を編み出すことができます。ある意味、クリエイティブな仕事といえるでしょう。

また、患者とどれだけ信頼関係を築けるかによって治療の効果も変わります。コミュニケーション能力など、自分らしさを発揮しやすい仕事でもあります。

専門知識を高められる

作業療法士が扱うリハビリ内容は多岐に渡るため、自分の興味がある分野を突き詰めることができます。

日常にある動作の中から、リハビリに応用できそうなものを発見し、治療法としての確立を目指してみましょう。もしかすると、自分が分野の第一人者になれるかもしれません。

また、作業療法士に関連する民間資格は10種類以上あり、国家資格を取った後も体系的にスキルを伸ばせます。勉強が欠かせない仕事ではありますが、資格取得を目標にすると、モチベーションを保ちやすいでしょう。

作業療法士に向いている人

車いすの男性を触診する男性

(出典) photo-ac.com

作業療法士の苦労ややりがいを踏まえ、向いている人の特徴を解説します。もし当てはまっているものがあれば、作業療法士を目指してみてもよいでしょう。

人助けが好き

作業療法士は決して高給取りとはいえないものの、患者の社会復帰を手助けできる仕事です。そのため、給与の高さではなく人助けをすることに喜びを感じられる人は、作業療法士に向いているといえるでしょう。

人と話す機会が多いので、コミュニケーションを取ることが好きな人も向いています。人生経験豊富な高齢者からは、学ぶことも多いでしょう。

好奇心が強く遊び心がある

好奇心が強く、遊び心がある人も作業療法士に向いています。

作業療法士のリハビリ内容は、日常生活における動作を取り入れています。つまり、日常の場面で患者のリハビリに有効な動作はないか、患者が興味を持ちそうなことはないかアンテナを張っておくことが重要です。

よさそうなアイデアがあれば、実際に試してみることもできます。日常の何気ない瞬間にも気を配り、アイデアを自分なりにアレンジできる人は、きっと活躍できるでしょう。

観察力と忍耐力がある

作業療法士には、観察力や忍耐力も求められます。患者が何に困っているかは千差万別です。中には、思うように話せない患者もいるでしょう。そのため、患者のしぐさや表情などから、何に困っているのか、どんな気持ちなのかを察する観察力が必要です。

また、リハビリが思うように進まないことはよくあります。そんなときに、自分の心が折れてしまってはリハビリは成功しません。苦しいときも根気強く、ポジティブな気持ちを保てる人は、作業療法士に向いているといえます。

作業療法士になる方法

メモをとる女性

(出典) photo-ac.com

作業療法士の大変な面を知った上で、それでもこれから作業療法士を目指す人に向けて、作業療法士になる方法を解説します。作業療法士になるには、学校に通って国家試験に合格しなければなりません。

専門学校に通い国家試験に合格する

作業療法士になるには、国家試験に合格する必要があります。しかし、受験資格を得るには、国や都道府県指定の専門学校や大学に3年以上通わなければなりません。

作業療法士の教育機関には、4年制の大学や専門学校、3年制の短大や専門学校があります。大学は一般教養などのカリキュラムが組まれているため、社会人から最短で作業療法士になるには、3年制の専門学校に通うのがよいでしょう。

作業療法士の教育は通信では受けられないため、通学が必要です。実習は医療機関の施設を利用する面から日中に行われることが想定されるので、夜間部よりも昼間部に通う方がスムーズでしょう。働きながら通うのは、なかなかハードルが高いのは事実です。

なお、卒業した教育機関によって待遇が変わることはありません。あくまで作業療法士の免許を取得していることが、大きな採用要件であるためです。

資格を持ったあとは、転職サイトで多くの求人を探せる

作業療法士の資格を取得したら、就職活動をして職場を探します。学校側が就職支援や就職先のあっせんをしてくれる場合も多いようです。

学校を頼るのもよいですが、転職サイトを使って自分で情報収集するのもおすすめです。転職サイトには、学校が持っているよりも多くの求人情報が掲載されています。転職サイトで高収入の求人が見つかるかもしれません。

転職サイトを使うなら、「スタンバイ」がおすすめです。スタンバイには作業療法士の高年収の求人を多く取りそろえています。学校の就職支援と併せて、転職サイトも使ってみてはいかがでしょうか。

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作業療法士は患者の自分らしさを取り戻す仕事

車いすの男性と話す女性

(出典) photo-ac.com

作業療法士は多忙であることや、忙しさの割に給与が見合っていないことなどから「やめとけ」といわれてしまうのも事実です。

しかし、患者の社会復帰をサポートする作業療法士の社会的意義は高く、自分の趣味や特技を生かせる面白さもある仕事です。

たくさん働いてたくさん稼ぎたい人には向かないかもしれませんが、人助けが好きな人や好奇心が強い人は作業療法士に向いているといえます。

どんな仕事にも向き不向きはあります。「やめとけ」といわれる理由をしっかりと理解し、よい面と悪い面の双方を比べながら、作業療法士を目指すかを検討しましょう。

松嶋健太
【監修者】作業療法士、呼吸認定療法士、LSVT認定臨床家松嶋健太

都内の回復期リハビリテーション病院に入職。主に脳血管疾患等などのリハビリテーション業務に従事。3年間在籍し、都内の株式会社が経営する訪問看護ステーションに転職。地域でのリハビリテーション業務と事業所のマネジメント業務、グループ内の教育研修を担当。5年間在籍し、現職である栃木県にある獨協医科大学病院に入職。現在は、超急性期分野でリハビリテーション業務に従事している。