介護資格の取り方は?最初に目指すべき資格と介護福祉士へのルート

介護職に就くために、資格取得を視野に入れている人も多いでしょう。介護の仕事に資格は必須ではありませんが、持っていれば業務範囲が広がり、収入アップも見込めます。これから介護職を目指す人が押さえておきたい、資格の取り方を解説します。

介護の資格を取るには?

高齢者の手を取る

(出典) photo-ac.com

介護の資格を取るためには、何から始めればよいのでしょうか?

介護資格は、未経験でも取得できるものと、研修受講や実務経験が必要なものに分けられます。まずは介護未経験者が目指せる資格を2つ紹介します。

最初に目指すは「介護福祉士実務者研修」

介護福祉士実務者研修は、介護職に必要な専門知識と実践的スキルを総合的に習得できる資格です。喀痰(かくたん)吸引や経管栄養などの医療的ケアの知識も学べ、介護士としてのスキルアップに役立ちます。

研修の受講に特別な要件はなく、修了試験を受ける義務もありません。介護未経験者でも、全課程を修了するだけで資格を取得できます。

ただし受講期間や費用は、介護経験や関連資格の有無によって変わります。未経験・無資格者の場合、受講期間は約6カ月、費用は10~15万円が目安です。

介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)などの介護資格を持っている人は、受講しなくてよいカリキュラムがあるため、期間も費用も少なくなります。

介護職未経験なら「介護職員初任者研修」も

介護福祉士実務者研修は誰でも受講できるとはいえ、未経験者には難しい内容も多く、ついていけない可能性があります。全くの初心者から資格取得を目指す人は、先に介護職員初任者研修を受講するとよいでしょう。

介護職員初任者研修は初心者が理解しやすいカリキュラムとなっており、修了すると介護の基本が身に付きます。修了試験に合格すれば、介護福祉士実務者研修のカリキュラムが一部免除されるメリットもあります。

なお受講に必要な期間と費用の目安は以下の通りです。

  • 期間:1~4カ月
  • 費用:3~8万円

国家資格「介護福祉士」の取得方法

パソコンを見ている女性

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介護福祉士は、介護分野で唯一の国家資格です。国家資格を持っていれば、介護の知識や技術があることを客観的に証明できます。転職の際にアピールポイントとして使えるほか、手当が支給される可能性が高く収入アップにつながります。

ただし介護福祉士を受験するためには、一定の条件を満たさなくてはなりません。受験資格を得る方法について、詳しく見ていきましょう。

参考:介護福祉士資格の取得方法について|厚生労働省

介護現場で働きながら取得

介護福祉士の受験資格は、介護現場で働きながら取得できます。必要な条件は次の通りです。

  • 従業期間3年(1,095日)以上かつ従事日数540日以上の実務経験
  • 介護福祉士実務者研修を受講・修了

従業期間とは、実務経験の対象施設および職種での在職期間を指します。在職期間には産休・育休・病休等の休職期間も含まれます。

従事日数は、実際に業務に従事した日数のことです。休暇や研修などで、介護業務に従事しなかった日は含まれません。1日の勤務時間は問わないため、パートやアルバイトのような短時間勤務もカウントされます。

養成施設に入学して取得

時間と費用に余裕があるなら、養成施設に入学するのもアリです。養成施設とは、文部科学大臣や厚生労働大臣の指定した学校、あるいは都道府県知事の指定した養成施設で厚生労働大臣によって「指定養成施設」に指定された大学や専門学校のことです。

2016年度までは、養成施設を卒業するだけで介護福祉士資格を取得できました。このため2017~2026年度の卒業者には、卒業後5年間は国家試験の合否にかかわらず資格を保持できる、暫定措置が設けられています。

また卒業後5年以内に国家試験に合格するか、5年間継続的に実務経験を重ねれば、6年目以降も資格を維持できます。卒業が2027年度以降になる場合も実務経験なしで受験できるため、検討する価値はあるでしょう。

福祉系高校に入学する方法も

福祉系高校を卒業した人も、介護福祉士の受験資格が得られます。福祉系高校では2009年度から新しいカリキュラムが導入されており、2009年度以降に入学した人は実技試験が免除されます。

旧カリキュラムを学んだ人や一部の指定高校を卒業した人も、実務経験や研修受講などの条件を満たせば実技試験なしで受験が可能です。すでに高校を卒業した人にはあまり関係のない情報ですが、介護業界における常識の1つとして覚えておくとよいでしょう。

介護福祉士試験の概要

勉強のイメージ

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介護福祉士は国家資格ですが、国家試験に対して難しいイメージを持っている人も多いかもしれません。難易度や合格ラインなど、介護福祉士試験の概要を見ていきましょう。

難易度・合格率

公益財団法人社会福祉振興・試験センターによると、2022年に実施された「第34回介護福祉士国家試験」の合格率は72.3%でした。合格者の72.6%が、養成施設や福祉系高校などを除く、働きながら受験した人で占められています。

なお1989年に実施された、第1回試験の合格率は23.2%です。その後徐々に合格率が上昇しており、第29回以降は70%前後をキープしています。

以前に比べて難易度が下がっていることを考えると、仕事と学習の両立も十分可能といえるでしょう。

参考:
第34回介護福祉士国家試験の受験者・合格者の推移|厚生労働省
第 34 回介護福祉士国家試験の合格発表について|公益財団法人 社会福祉振興・試験センター

試験の合格ライン

介護福祉士試験では、最初に筆記試験を受け、後日必要に応じて実技試験を受けることになります。

筆記試験は125問あり、全て5つの選択肢から正解を1つ選ぶ選択方式で出題されます。1問1点の125点満点で、正答率60%以上であることが合格の目安です。ただし問題の難易度によって、補正が入る場合もあります。

また問題は11の科目群に分かれており、全ての科目群で得点しなくてはなりません。総得点が75点以上でも、1つでも0点の科目群があれば不合格となるため注意が必要です。

実技試験も筆記試験同様、課題の総得点の60%程度を基準として合否を判定します。

介護業界で役に立つその他の資格

カウンセリングをする介護士

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介護の資格はさまざまあり、特定の業務に役立つ専門的な資格もあります。スペシャリストを目指したい人は、取得を検討してみるとよいでしょう。近年需要が高まっている、おすすめの資格を3つ紹介します。

レクリエーション介護士

レクリエーション介護士は、2014年に設立された民間資格です。介護施設で実施するレクリエーションの企画立案・実行能力が身に付きます。

資格には1級と2級があり、2級は誰でも受講できます。1級を受講できるのは、2級の合格者のみです。

介護におけるレクリエーションは、高齢者の心身の健康維持・回復・向上に役立つとされ、多くの施設がそれぞれに工夫しながら取り組んでいます。

しかし高齢者向けのレクリエーションについて学ぶ機会は少なく、手探りで実施せざるを得ない現状がありました。レクリエーション介護士資格を取得すれば、より高齢者に適したレクリエーションを企画でき、利用者に喜んでもらえるでしょう。

認知症ケア専門士

認知症ケア専門士は、名前の通り認知症のケアに関わる専門知識・技能を得られる民間資格です。認知症を患う高齢者は年々増えているため、取得後は活躍の場が広がることが期待できます。

ただし、受験には3年以上の認知症ケアの実務経験が必要です。実務経験は認知症専門施設や機関に限らず広く認められており、職種や職務内容、保有資格の種類も問われません。

実際に、介護職以外にも看護師や社会福祉士、作業療法士などさまざまな人が受験しています。

参考:高齢者の健康・福祉|平成29年版高齢社会白書(概要版) - 内閣府

介護予防運動指導員

介護予防運動指導員とは、高齢者が自立した生活を送れるように、生活習慣や運動の指導・サポートをする専門職です。介護予防プログラムを作成したり、要介護状態にならないように指導したりする仕事と考えてよいでしょう。

資格を取るためには、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターが主催する講習会に参加し、修了試験に合格する必要があります。さらに、資格は3年ごとに更新手続きが必要です。

講習会には医療・介護・福祉系の国家資格保有者のほか、介護関連では以下の条件を満たしている人が参加できます。

  • 介護支援専門員・健康運動指導士・介護職員基礎研修課程修了者
  • 訪問介護員2級以上かつ実務経験2年以上
  • 介護福祉士実務者研修修了者
  • 介護職員初任者研修修了者かつ実務経験2年以上

経験に合った資格取得ルートを確認しよう

介護士の女性

(出典) photo-ac.com

介護関連の資格の多くは、現場で働きながら取得できます。未経験でもチャレンジできる資格もあるので、それぞれの取得条件をよく確かめ、自分の経験に合った資格を目指すとよいでしょう。

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