仕事をしている人にとって、年収1,000万円は1つの目標になり得る数字で、そのために日々努力を重ねている人もいるでしょう。今回は理学療法士で年収1,000万円は実現できるのか、実現するにはどうしたらいいのかを解説します。
理学療法士の給料事情
夢の年収1,000万円を目指すには、まず現状を把握しておく必要があります。理学療法士の平均年収を知って、現在地点をはっきりさせましょう。
平均年収は427万円ほど
厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査」(2021年)によると、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士の平均給与は約427万円です。一方、国税庁が公表する「民間給与実態統計調査」によると、給与所得者全体の平均給与額が443万円なので、働く人全体から見ると、理学療法士の給与はやや低めといえるでしょう。
他の医療職と比較しても、理学療法士の給与はやや低いと判断できます。看護師の平均給与額が約499万円、薬剤師が約581万円、臨床検査技師が約496万円となっています。有資格者しか就けない医療職の中でも、理学療法士はやや低賃金な仕事といえそうです。
理学療法士にとって年収1,000万が難しい理由
このように、理学療法士の仕事だけで年収1,000万円を実現するのは簡単ではありません。その理由について見ていきましょう。
医療制度的に限界があるから
医療制度上、理学療法士の仕事だけで高収入を目指すのは、非常に難しいといわざるを得ません。前提として、医療職の報酬は診療報酬によって賄われています。リハビリにも一定の点数が設けられていて、理学療法士の仕事に対して支払われる診療報酬も一定です。
スキルを磨いてリハビリの質を上げても、患者が払う診療報酬は変わりません。つまり、個人の能力や努力が給与に反映されにくい状態なのです。
また、理学療法士が担当できる仕事の数には、制限が設けられています。1単位を20分として1日に24単位まで、1週間に108単位までと上限が決められています。そのため、数をこなして年収を上げるアプローチも難しくなっています。
理学療法士の数が飽和しつつあるから
理学療法士として働く人の多さも、理学療法士で年収1,000万円が難しい理由の1つです。理学療法士の数は着実に増え続けています。
1989年度には1,000人をわずかに下回っていた合格者数が、2013年度以降になると、年間の合格者数が度々1万人を突破するようになりました。合格者の総数は、2022年度時点で20万人に到達しています。
人材としての希少価値が保たれている資格保有者は、高収入が見込めます。しかし有資格者が多くなれば、人材としての希少性が薄れ、高収入が望めなくなるでしょう。供給が需要を上回りつつある理学療法士は、高収入が期待しづらい仕事になりつつあるのです。
参考:統計情報|協会の取り組み|公益社団法人 日本理学療法士協会
高みを目指すなら挑戦したい収入アップ法
理学療法士の仕事で年収1,000万円を実現するのは厳しい道のりですが、絶対に不可能というわけでもありません。年収1,000万円を目指す理学療法士に実践してほしい、収入アップ術を紹介します。
資格を取って独立開業
開業は、理学療法士が年収1,000万円を目指す上で有効な手段です。独立して開業すれば、収入アップの壁である診療報酬の制度から解放され、単価を自由に設定できます。
ですが、理学療法士には開業権が認められていません。理学療法は、医師の指示の下でのみ提供が許されている業務だからです。
ただし理学療法士であっても、理学療法を患者に提供しなければ、開業しても問題ありません。たとえば整体院や介護予防事業の立ち上げなどであれば、理学療法士のキャリアを生かした独立ができます。その際、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師などの資格を取得していれば、より優位に事業を展開できるでしょう。
現地の資格を取得して海外で働く
海外で働くのも、理学療法士で年収1,000万円を目指す人にとって有益な手段です。海外の方が理学療法士の社会的地位が高く、高収入を実現しやすいといえます。
また、アメリカやイギリスで働く理学療法士には、医師の指示を受けずに患者にリハビリを提供する、クリニックの開業権が認められています。理学療法士として自分の力で収入を伸ばせるのです。
ただ、海外で理学療法士として働くには、その国の理学療法士免許が必要です。日本で理学療法士の資格を持っている場合、現地の養成校に通って資格を取得するか「国際免許書き換え試験」に合格することで、免許の互換ができる国で理学療法士として働けるようになります。
大学教授を目指す
理学療法士の仕事を学問として究めたい人には、大学教授を目指すのも年収1,000万円を実現する手段の1つです。賃金構造基本統計調査によると、大学教授(高専を含む)の平均給与は約1,072万円なので、年収1,000万円も夢ではありません。
しかし、大学教授になるのは非常に狭き門です。大学卒業後、修士課程、博士課程を経て助教からキャリアをスタートし、専攻する学問において論文発表を行い、幾重にも実績を積み重ねる必要があります。
助教から講師、准教授とステップアップしていき、大学教授にまでたどり着くには膨大な時間がかかります。そのため大学教授への道は、学問を究めたいという強い思いを持っていなければ、困難が多いといえるでしょう。
参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
本業が伸びないなら副業で稼ごう
本業だけで年収1,000万円の実現が困難なら、もう1つの仕事を始めて収入アップを目指すのも手です。本業と副業を両立できれば、2つの収入源を持つことができ、自然と収入アップがかないます。
訪問リハビリ
理学療法士の資格を生かしてできる副業が、訪問リハビリです。訪問リハビリは、仕事を通して知識の取得や視野の拡大が実現できるので、理学療法士としてスキルアップしたい人に適しています。
訪問リハビリを副業にするメリットは、時間の自由が利きやすいところです。週1だけの勤務をはじめ、昼休憩中や終業後の時間を副業に充てるというようなフレキシブルな働き方が実現できます。
訪問リハビリの仕事を探すならスタンバイがおすすめです。「理学療法士 週1」「訪問リハビリ」などのキーワードで検索すれば、本業があっても勤まる仕事が見つかるでしょう。
スポーツトレーナー
スポーツトレーナーも理学療法士の副業におすすめの仕事です。
スポーツトレーナーとは、けがを抱えるスポーツ選手のリハビリをサポートしたり、選手のパフォーマンスの向上を目的とした指導を行ったりする職業です。理学療法士の仕事との共通点が多いので、リハビリの現場で培った知識と経験が生かせます。
スポーツトレーナーを副業にするメリットは、自由に料金を設定できることです。スポーツトレーナーの料金設定は自由なので、料金を高く設定しても問題ありません。自分が手にしたい報酬を自分で設定できるので、望み通りの高収入に近づけるでしょう。
セミナー講師
話好きな理学療法士には、セミナー講師の仕事が適しています。理学療法士の経験を生かして同業者に向けて行うセミナーや、健康増進や介護予防を目的にした一般人向けのセミナーで登壇し、参加者の欲しい情報を提供するのがセミナー講師の仕事です。
セミナー講師の魅力は、セミナーを通して地域貢献ができることです。「地域住民が健康的に生活できるようサポートしたい」「寝たきりになる人を1人でも多く減らしたい」との思いがある人にとって、やりがいの多い仕事といえます。
セミナー講師を副業にしたいなら、自治体や保健所などに問い合わせ、セミナー講師を募集していないか確かめるところから始めましょう。
Webライター
仕事やプライベートが忙しく、副業にまとまった時間を捻出できない人には、Webライターが適しています。
Webライターとは、インターネット上に掲載される記事を執筆する仕事です。企業が運営するメディアに掲載される記事や、アフィリエイト(広告経由で発生した売上に対し報酬が支払われる広告手法)を目的とした記事などを執筆します。
Webライターのメリットは、時間に縛られずに活動できることです。Webライターの仕事では、作成した記事の納品によって報酬が発生します。納品さえすればどのようなタイミングで働いても問題ないため、本業の休憩時間や通勤中の電車の中など隙間時間を副業に充てられます。
年収1,000万は難しいが可能性ゼロではない
現状をふまえると、理学療法士として年収1,000万円を実現するのは難しいといえるでしょう。ただし、100%不可能なわけではありません。
理学療法士のスキルを生かした独立や副業、あるいは海外移住など、準備さえすればチャレンジすることができる手段があるので、本気で年収1,000万円を目指す方はぜひ可能性を探ってみてください。