薬剤師の資格を持っているとどのような環境で働けるのか、どのようなやりがいを感じられるのか気になる人もいるのではないでしょうか。働ける業種や業務内容、それぞれの業務での代表的なやりがい、モチベーションアップの方法などを解説します。
▼この記事のポイント(記事概要)
- 薬剤師のやりがいと魅力は多い
資格を持っていると働ける領域は広く、病院や調剤薬局から製薬企業、行政機関などがあります。 - やりがいは職場によって変わる
病院とドラッグストアなど、業務内容が異なると感じられるやりがいも変わります。 - 意欲が湧かないときの対処法
やりがいを感じないときは問題を放置せず、適切に対処することでモチベーションが上がります。
薬剤師のやりがいと魅力
薬のプロフェッショナルとして薬剤師が活躍できる場は豊富にあります。仕事を通して感じるやりがいは、個人の考えや業務によってさまざまです。
ここでは、薬剤師として働く方が感じているという主なやりがいについて紹介します。どのような点にやりがいを感じているのか知ることで働いている自分を想像しやすいでしょう。
命を預かる責任ある仕事ができる
処方された薬の調合、患者の服薬相談など、薬剤師の仕事は患者の命や健康に直結します。病院や薬局をはじめ、どのような職場で勤務したとしても、薬を通じて患者を守る使命は変わりません。
薬剤師は、医師や看護師などと同様に、病気を理解した上で、薬の効果や副作用などを患者に分かりやすく説明します。患者に不安を与えないために正確な情報を伝え、信頼できる言動を使用することを心がけなくてはなりません。
質の高い医療を提供する目的で、専門性の異なるスタッフが密に協力して活動する「チーム医療」を行う医療機関もあります。薬剤師も専門スタッフの1人として、知識や能力を発揮できます。
患者に寄り添い健康をサポートできる
医療の目的は、けがや病気で苦痛を感じている人に寄り添い、生活の質を向上させることです。患者が抱える症状の治癒や改善に直接関与し、健康増進をサポートできるのもやりがいの1つでしょう。
かかりつけの薬剤師として、特定の患者へ長期的に寄り添う場合もあります。継続的なコミュニケーションの中で、体調の変化や健康に関する悩みを聞き、改善に向けたアドバイスを行います。
薬局は地域住民の健康をサポートする拠点です。正しい薬の服用方法を周知したり、病気予防に関するアドバイスをしたりするなど、健康相談や健康意識の向上にも貢献します。
また、新薬や新しい治療法など、日常的に知見を広げる努力も必要です。最新のOTC(Over The Counter)医薬品に関する情報収集も、セルフメディケーションの普及に役立ちます。
自分に合った柔軟な働き方ができる
結婚や育児、介護などライフステージの変化により、働き方を変えなければならないことも出てくるでしょう。配偶者の転勤で引っ越しなどがあると、以前と同条件の職場を引っ越し先の地域で見つけることになります。
そのような際に、薬剤師として働ける場は全国にあるため安心です。薬は子どもから高齢者まで多くの人が使うため、資格を持っていれば病院や調剤薬局、ドラッグストアなどさまざまな場所で求人を見つけられるでしょう。
また、勤務形態もフルタイムの正社員以外にもパートやアルバイト、短時間勤務などステージに合わせて柔軟な働き方を選択できます。一度仕事を離れてもキャリア構築を諦める必要はありません。
専門的な知識が得られる
病気や薬に関して幅広い知識を持っているため、医師からも意見やアドバイスを求められることがあります。自分の知識や経験が患者や一緒に働く医療関係者に役立つと、充実感につながるでしょう。
がん専門薬剤師や糖尿病薬物療法認定薬剤師など、より特殊で高度な資格を取得することも可能です。がんや糖尿病有病者数は増加傾向にあり、専門性の高い人材は今後重要性が増すと推測されます。
医療技術は日々進歩し、新たな治療法や薬が次々と開発されています。その現場に身を置き、自分の知識やスキルを磨き続けられれば、数年後には大きな成長を感じられるでしょう。
始めのうちは、対応できる業務範囲に限りがあるかもしれません。どのような職場であっても薬の専門家としての経験値を増やすことで、迅速な調剤や幅広いアドバイスができるようになるでしょう。
年収や待遇が良い
スタンバイに2月1日~28日の1カ月間に掲載された求人統計では、正社員の平均年収は474万円、年収中央値は480万円でした。1月より年収平均は8万円、中央値は7万円減少しています。
同じ期間におけるパート・アルバイトの平均時給は2,010円、中央値は2,000円でした。平均時給は前月より32円、中央値は1円減少しています。
また、派遣社員の平均時給は2,243円、中央値は2,073円でした。こちらも時給は101円、中央値は65円の減少です。
正社員の求人件数は、昨年9月以降48万件以上を維持し、安定しています。また、パート・アルバイトの求人数も12万件以上で、常に高い需要があるといえるでしょう。
薬剤師のやりがいや魅力は働く場所によっても変わる
薬剤師の代表的な業務は、薬局やドラッグストアでの調剤や患者への服薬相談ですが、それ以外にも薬剤師が担う業務は多々あります。
あまり周知されていませんが、製薬企業や行政で活躍するケースもあります。ここからは、それぞれの環境で感じるやりがいや魅力を見てみましょう。
ドラッグストアの薬剤師
ドラッグストアには、OTC医薬品やサプリメントを求めて多くの人が来店します。OTC医薬品は処方箋を必要としない薬で、一般的に「市販薬」と呼ばれます。
しかし、市販薬とはいえ一般の人が多様な製品の中から自分に合った医薬品を選ぶのは、簡単なことではありません。顧客に適した薬を自分の知識を基に提案できるのは、ドラッグストアで働くやりがいの1つです。
ドラッグストアでは、健康食品や日用品など幅広い商品を取り扱っています。そのため、調剤薬局などで働くよりも幅広い業務を担当し、販売促進のための売り場デザインなどを担うこともあります。
調剤薬局の薬剤師
調剤薬局での主な仕事は、患者から処方箋を受け取り、医師の指示に従って調剤することです。また、調剤した薬の内容や服用方法を患者に分かりやすく説明するのも大切な仕事です。
調剤作業は、材料のピッキング、指示に基づいた正確な計量と混合など、慎重な作業が求められます。患者の健康に重大な影響を与える可能性があるため、分量間違いなどは許されません。
重圧のかかる仕事ですが、調剤薬局は患者個人と地域医療を支える重要な存在です。かかりつけ薬剤師として1人1人とコミュニケーションを取りながら、患者を直接サポートできるやりがいがあります。
病院勤務の薬剤師
病院で勤務する場合、チーム医療の一員として医師や看護師など他のスタッフと一緒に行動することがあります。カルテや病棟業務で患者の病状を把握し、積極的に治療へ関与することも可能です。
入院患者の服薬を担当するケースでは、日々治療の内容や投薬による病状の変化などを観察できます。治療の最前線で自分の知識と経験をフル活用し、患者の健康とチームへの貢献を目指します。
病院以外では、経過観察など患者の治療に携わることは難しいでしょう。夜勤や休日出勤もあることから柔軟な働き方はできないものの、他の職場にはないやりがいがあります。
基礎研究が行われる大学病院では、先端医療に携わる機会もあります。新薬を利用した治験に関与できる可能性もあるでしょう。自分次第で活躍する機会を得られる点も、病院勤務のメリットです。
製薬会社の薬剤師
まだ世に出ていない新薬の開発や、その普及のために働く人もいます。製薬会社には、薬剤師が活躍できるポジションがいくつかあります。例えば、新薬開発職・MR(医薬情報担当者)です。
医薬品開発は、基礎研究から10年以上もかかる長い期間とさまざまなプロセスを経て、承認審査まで進みます。その中で、管理薬剤師・治験コーディネーターなどとして活躍できます。
MRは、自社が取り扱う医薬品の情報を医師や薬剤師に提供する仕事です。病気に対する有効性や安全性など、医師が必要な情報を正確に伝達しなければなりません。
製薬会社での勤務には、強い使命感や責任感が求められます。しかし、自分の業務が新しい治療につながり、命を救えると実感できれば大きな誇りとなるでしょう。
行政機関の薬剤師
保健所や検疫所など、自治体の行政機関で働くケースもあります。保健所の代表的な役割は、薬事衛生です。医薬品や医療機器などを扱う業者の管理監督・指導を行い、安全性や品質を確保します。
また、食中毒などの健康被害を防ぐ目的で、飲食店や食品製造業者への監督や指導を行うのも役目です。水道や温浴施設など、日常生活で利用する施設やインフラ管理を担う業者も対象です。
行政での仕事は、直接患者にアプローチするわけではありません。しかし、食品衛生や環境衛生の監督や指導により、大規模な感染症の発生や医療事故を防ぎ、広い視野で地域住民を守れます。
また、地域の衛生管理や健康増進に関わる法的な環境を整備し、運用体制を構築できます。地域を支える使命感など、医療機関や薬局の薬剤師とは違うやりがいを感じられるでしょう。
薬剤師のやりがいが感じられない場合の対処法
業務を長期間続けていると、やりがいを感じられなくなることもあるでしょう。そのままの状態で勤務していると、自分にも職場にも悪影響を及ぼしかねません。
ここでは、やりがいを感じなくなったときの対処法を紹介します。自分に適した方法を見つけ、仕事への熱意を取り戻しましょう。
有給や休暇を取得してリセットする
忙しさから精神的な余裕がなくなると、業務の効率が落ち、やりがいを感じられなくなります。この場合はいったん仕事から離れ、気持ちをリセットするとよいでしょう。
休暇制度を利用すれば、まとまった休みを使って日常から離れられます。好きなことに費やす時間を作り、精神的な余裕を取り戻すことでやりがいを再認識できるでしょう。
責任感が強い人は、人手不足の中自分だけ休むのは気が引けると感じるかもしれません。しかし、余裕がないと効率が落ちてミスも発生しやすくなるため、余計に自分を追い込んでしまいます。
冷静な判断ができず誤った行動をすると、患者の健康を害するなどの結果につながる可能性もあります。疲れたときは思い切って上司に休暇取得を相談しましょう。
信頼できる仲間や同僚に相談する
自分の置かれている環境を客観的に見るために、同僚や友人に相談するのも効果的です。自分の視点が偏っていないか、同僚はどのように考えているのかなども確認してみましょう。
上司や先輩の中には、同じような悩みを経験した人がいる可能性もあります。同僚に聞くより勇気が要るかもしれませんが、問題を乗り越えた経験者としてのアドバイスは参考になるでしょう。
人に話を聞いてもらうと、自分の考えを言語化しながら整理できます。その中で、これまで気付いていなかった仕事の魅力ややりがいを再発見できるかもしれません。
同じ職場ではなくても、大学時代の同級生や先生などと話をしてもよいでしょう。さまざまなキャリアを歩む同級生に刺激を受ければ、自分のモチベーションもアップするかもしれません。
新しい目標を設定する
自分のこれまでのキャリアを見直し、何にやりがいを感じるかを整理してみましょう。そのやりがいを感じるために、どのような目標を設定すればよいか考えます。
これまで目指してきた目標は、自分のやりがいを感じるものと違う可能性もあります。また、長い期間同じ環境で働いていると作業内容に変化がなく、成長を感じられなくなる場合もあるでしょう。
そのようなときは今の自分が目指す新しい目標を再設定して、その達成に必要なプロセスを考えましょう。新しいことにチャレンジして新たなスキルを獲得できれば、仕事の幅も広がりキャリアアップにつながります。
高度な資格を取得する目標もよいでしょう。より専門性の高い資格の取得により活躍できる領域が広がり、モチベーションも上がります。
スキルを生かした転職を検討する
薬剤師の知識やスキルは、さまざまな場所で活用できます。資格と経験を生かし、新たな環境に移るのも1つの選択肢です。病院・薬局・製薬会社など、自分に合う環境を探してみましょう。
自分に合わない作業は、やりがいを感じないだけでなくやる気も落ちやすくなります。医療現場でのスキルアップにやりがいを感じる人が、ドラッグストアで働いてもモチベーションは上がりにくいでしょう。
また、転職によって待遇が下がるなどデメリットもあります。自分が何を重視するのかを整理し、その実現にふさわしい環境があれば、転職にチャレンジすることをおすすめします。
薬剤師は健康をサポートできるやりがいのある仕事
薬剤師の資格があれば、ドラッグストアや調剤薬局、病院、製薬会社などさまざまな場所で仕事に従事できます。それぞれの職場で感じるやりがいや魅力も多様なので、自分に合った場所を見つけられるとよいでしょう。
薬剤師は全国各地で働ける職種なので、ライフステージの変化があっても比較的キャリアアップを図りやすいといえます。需要も高い水準を維持しているため、職探しに困ることはないでしょう。
やりがいを感じるために大事なのは、自分に合った仕事を見つけることです。国内最大級の仕事・求人情報一括検索サイト「スタンバイ」には薬剤師の求人が多数掲載されているので、この機会に理想の求人を探してみましょう。