薬剤師に将来性はある?選ばれる薬剤師になるためのポイントとは

薬の専門家である薬剤師は、医師や看護師と同様に国家資格が必要な医療専門職のため「仕事に困らない」といわれます。しかし近年では、将来性が心配という声も聞かれるようになりました。その理由は何か、将来性がないというのは本当なのか解説します。

薬剤師の将来性は?データから検証

薬を持つ手

(出典) photo-ac.com

薬剤師の将来性がどうなのかを探る上で、参考になるのが有効求人倍率です。求人数と求職者数のバランスを示すもので、倍率が高いほど求人が多い=求職者にとって売り手市場であると予測できます。

薬剤師の有効求人倍率は低下傾向にある

厚生労働省による一般職業紹介状況の有効求人倍率(2022年10月)は、医師・薬剤師で2.07倍となっています。これは医師や薬剤師1人に対して、求人が2.07件あるということです。

全体の平均である1.35倍からすれば高い数値なので、「将来性がない」とは感じられないかもしれません。しかし過去の結果と比較してみると、2012年で7.85倍、2017年は5.45倍と、この10年で大きく下がり続けていることが分かります。

つまり10年前と比較して、現在では薬剤師の需要が減っているといえるのです。

参考:
2022年10月 一般職業紹介状況|厚生労働省
2012年10月 一般職業紹介状況|厚生労働省
2017年10月 一般職業紹介状況|厚生労働省

都道府県によって薬剤師の数にばらつき

有効求人倍率が下がっているから、やはり将来性がないのかと思うかもしれませんが、それだけで判断するのは早計でしょう。薬剤師の数は、都道府県によって大きくばらつきがあるからです。

有効求人倍率が低下する一方で、人口10万人当たりの薬剤師数は確かに増加しています。しかし、平均を大きく上回る地域もあれば、反対に平均に満たない地域も少なくありません。

地方など不足している地域の需要を考えると、調査の数字だけを見て一概に将来性がないともいえないでしょう。

参考:令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況|厚生労働省

薬剤師に将来性がないとされる3つの理由

男性薬剤師

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薬剤師の将来性が不安視されているのには、さまざまな理由があります。薬剤師の数が過剰になる、薬剤師に代わる職種やAIが増えているといった理由を見ていきましょう。

薬剤師に代わる職種への期待

登録販売者は、薬剤師の仕事の一部を代わりに行う職種です。服用や取り扱いに特に注意が必要な第一類医薬品は薬剤師しか取り扱えませんが、登録販売者は一般医薬品のほとんどを販売できます。そのため、ドラッグストアによっては薬剤師を置かない店舗も増えてきました。

また、今後導入の可能性があるファーマシーテクニシャンは、薬剤師の指示に従って、処方箋の薬をそろえるのが主な業務です。資格がなくてもできるので、薬剤師の負担軽減が期待されています。

薬剤師は監督だけすればよいとなると、ドラッグストアや調剤薬局における求人が減っていく可能性が考えられるでしょう。ただ、これらの仕事が増えてきたからといって、薬剤師の仕事がなくなるわけではありません。

参考:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第36条の9 | e-Gov法令検索

AIによる調剤システムの普及

調剤システムにおけるAIの活用が進んでいることも、薬剤師に将来性がないとされる理由の1つです。薬歴管理や在庫管理など、これまで薬剤師が担ってきた仕事の一部には、すでにAIが利用されています。

今後さらに技術が進歩すれば、ファーマシーテクニシャンが本格的に導入される前に、薬のピッキングのような仕事もAIが担うようになるかもしれません。

将来的には調剤も自動化され、薬剤師は最終的なチェックをするだけでよくなる可能性もあります。ただ、患者に合わせた服薬指導や注意事項の説明、複雑な判断が必要な医療機関との連携など、人間でなくてはできない業務は引き続き薬剤師を必要とするでしょう。

薬剤師が飽和状態になる可能性

薬剤師の有効求人倍率が低下傾向にある一方で、薬剤師の有資格者は増えています。

厚生労働省による2020年の統計結果では、全国の届出薬剤師数は32万1,982 人で、前回(2018年)と比べると1万693人(3.4%)の増加です。また、人口10万人当たりの薬剤師数も8.5人増えていました。

薬剤師の資格は一度取得したら一生有効なので、受験者数が大きく落ちない限り、薬剤師は減らないでしょう。その上で自動化できる業務も出てくれば、薬剤師が飽和し供給が需要を上回る可能性があります。

参考:令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況|厚生労働省

就業場所別に見る薬剤師の将来性

薬剤師の女性

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働く場所によっても、薬剤師の将来性には違いが出てくると考えられています。薬剤師の主な就業場所である病院・調剤薬局・ドラッグストアで想定される、薬剤師の将来性について確認しましょう。

病院

病院で働く薬剤師(病院薬剤師)は、当面需要がなくなることはないと考えられています。終戦直後のベビーブームの時期に生まれた「団塊の世代」が、すべて後期高齢者になる時期が控えているためです。

厚生労働省は、2025年には全国民の約18%が75歳以上になると推計しています。高齢者が増えれば、それだけ病院にかかる人も増えるでしょう。しかし、患者が増えるから薬剤師の地位が必ずしも安泰とは言い切れません。

現在でも医療費は国の財政を圧迫しています。病院によっては自動化を進め、薬剤師の数を減らす動きが出てくることも予想されるのです。病院薬剤師として必要とされる人材になるには、専門性を高める努力が求められるでしょう。

参考:人口の推移、人口構造の変化|厚生労働省

調剤薬局

医師の処方箋に基づいて調剤する薬局の店舗数は増加傾向にあり、厚生労働省の調査によれば2020年時点で全国に約6.1万軒(宮城県、福島県の一部は除く)となっています。

調剤設備のあるドラッグストアも含めて、調剤に携わる薬剤師が働ける薬局はゆるやかに増加している傾向です。薬局の数だけを見れば、将来性に大きな不安はないといえるでしょう。

ただ、自動化が進んだり薬剤師の数が増えたりしている状況があるため、求められる人材になるには付加価値を高める努力が必要です。

参考:薬局薬剤師に関する基礎資料(概要)|厚生労働省

ドラッグストア

日本チェーンドラッグストア協会の調査では、2021年度時点のドラッグストア店舗数は全国で2万1,725店舗とされます。前年度と比べて441店舗増えました。2000年度の調査開始以来、ドラッグストアは毎年度300~600、多い年度では700店舗以上も増え続けています。

特に調剤設備があるドラッグストアでは、登録販売者では代わりにならない業務が増えるため、一定数の薬剤師が求められます。

ただし、より幅広いジャンルで活躍するためには、サプリメントアドバイザーをはじめとした資格を取る・接遇スキルを高めるといった、薬剤師としての価値を高めていく努力も必要になるでしょう。

薬剤師として仕事を続けていくには

薬のデータ分析

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薬剤師の将来性が危惧される中で、仕事を続けていくにはプラスアルファの価値が必要です。専門性を高めたり、今後需要が増えることが予想される在宅医療のスキルを身に付けたりして、選ばれる薬剤師を目指しましょう。

専門性を高める

看護師に上位資格である認定看護師や専門看護師があるように、薬剤師にも認定薬剤師・専門薬剤師の制度が設けられています。

認定薬剤師になるには、一般社団法人日本病院薬剤師会の認定試験に合格する必要があります。勤務する医療機関で特定の専門分野における薬物療法の知識と技術を用いて、質の高い業務を行っていると証明できなければ認められません。

認定薬剤師は分野ごとに分かれていて、「がん薬物療法認定薬剤師」や「感染制御認定薬剤師」など5種類があります。

専門薬剤師になるには、認定薬剤師の認定を受けた後、特定の専門分野での実務経験や実績が必要です。さらに研修や講習を受けて試験に合格した上で、各専門領域の研究業績も吟味されます。認定薬剤師になるより難しいだけでなく、認定後も5年ごとに資格更新が不可欠です。

認定薬剤師や専門薬剤師の資格を持っていれば、深い知識と確かな技術を備えているとして、中~大規模病院で評価されるでしょう。医療チームの一員として、さらにキャリアを積める可能性もあります。

参考:クローズアップ 認定・専門薬剤師|一般社団法人日本病院薬剤師会

在宅医療のスキルを身に付ける

高齢化に伴い、在宅医療は今後ますます充実が求められると想定されます。医療に携わる存在として、薬剤師にも在宅医療のスキルが必要になってくるでしょう。

在宅医療における薬剤師の役割としてまず挙げられるのが、自分で薬を受け取りに来るのが困難な患者や高齢者の自宅に届けることです。本人や家族の負担を減らせるだけでなく、紛失のリスクも防げます。

また、適切な服薬指導や薬の管理も薬剤師には求められます。健康状態がよくない患者や認知機能に衰えのある高齢者にも指導するため、伝え方への配慮や工夫が必要です。

かかりつけ薬剤師を目指してキャリアを重ねる

2016年にスタートして「かかりつけ薬剤師制度」は、年々ニーズが高まってきました。かかりつけ薬剤師は、患者が選んだかかりつけ薬局に常駐し、調剤や薬に関する情報提供・健康相談などを担います。

薬局の営業時間外に対応したり必要なら在宅医療のサポートも行ったりする、患者にとって専任薬剤師のような存在です。

ただし、かかりつけ薬剤師になるには、十分な経験が必要とされます。公益社団法人日本薬剤師会では「十分な経験のある薬剤師」の条件を定めています。

  • 薬局に薬剤師として3年以上働いている
  • その薬局での勤務時間が週32時間以上で、1年以上在籍している
  • 医療に関する地域活動に参加している
  • 研修認定薬剤師など知識が十分と認められている

ステップアップを目指すなら転職も選択肢

履歴と封筒とペン

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将来性を考えて、薬剤師としてのステップアップを目指すなら、転職も視野に入れましょう。薬剤師の資格を生かして別の分野で働く選択肢もあります。

転職活動は将来を見据えて

薬剤師として今後も仕事を続けていくなら、転職活動を始めるにあたって将来のキャリアをよく考えましょう。自己分析をしっかりした上、なぜ転職するのか、自分はどんな薬剤師になりたいのかを明確にしておくことが大切です。

また、勤務形態や給料・福利厚生といった応募先の情報も、十分に収集もしましょう。スタンバイでは職種はもちろん、勤務地や勤務形態・こだわり検索など条件を指定して求人情報の検索が可能です。

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薬剤師の資格を生かした仕事も視野に

薬剤師として働くほかにも、資格を生かせるさまざまな仕事があります。

製薬会社のMR(医療情報担当者)や研究開発なら、薬の知識や調剤の経験が役立つでしょう。医療機関の現場も知っているので、医師やスタッフの立場を考えて話ができるのがメリットです。

また、治験コーディネーター(CRC)や臨床開発モニター(CRA)といった製薬会社の治験に関わる仕事も、薬剤師の資格を持っていると有利になります。薬剤師としてある程度の経験を積んだ後には、別分野にもチャレンジする道があることを覚えておきましょう。

無駄な転職はマイナスになる可能性あり

薬剤師は資格さえあれば基本的にどこでも働ける職種です。しかし、転職を繰り返すとかえって年収が下がったり、仕事が見つけにくくなったりする可能性があります。

ただ「何となく」「漠然とした不満があるから」といった理由で転職すると、現在より待遇が悪くなったり結局満足できずにまた転職したりする事態になりかねません。

しっかりとした軸をもとに転職活動に望めば、面接でもアピールしやすくなります。なぜ職場を変えたいのかを明確にして、軸を決めてから転職を考えましょう。

スキルを磨いて選ばれる薬剤師になろう

薬の説明をする

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「薬剤師は将来性がない」という見方もありますが、選ばれる薬剤師になれば未来は十分に期待できます。日々の仕事をただこなすだけでなく、薬剤師としてのスキルを磨きましょう。

認定薬剤師・専門薬剤師の資格や薬に関するより深い知識、技術などプラスアルファの価値を増やし、キャリアを積んでいくのがポイントです。必要であれば転職も検討して、将来性のある薬剤師を目指しましょう。