栄養士の給料の平均は?安いといわれる理由や給料を上げる方法を解説

栄養士の給料は安いといわれています。栄養士を目指している人にとっては、実際の給料はいくらなのか気になるものです。そこで栄養士の平均的な給料や、安いといわれる理由について解説します。給料を上げる方法も紹介するので、参考にしてください。

栄養士の平均的な給料はいくら?

栄養士の女性

(出典) photo-ac.com

一般的に、栄養士の給料は安いといわれることが多いようですが、実際に給料は安いのでしょうか。まずは栄養士の平均的な給料を、さまざまな角度から見ていきましょう。この記事では、基本給である月給に諸手当を含めた金額を「給料」として解説します。

栄養士の給料と民間の平均額を比較

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(2021年)によると、栄養士の給料の平均は月に25万5,500円、年間のボーナスは60万9,600円でした。このデータをもとに年収を計算すると、367万5,600円になります。

一方、国税庁が発表している「民間給与実態統計調査」の2021年分の結果報告を基に算出した給与所得者の平均給料は、月に約31万3,900円です。年間のボーナスの平均は66万6,000円とされるので、年収にすると443万2,800円になります。

この結果を見る限り、給与所得者全体の平均給料と比較すると、栄養士の給料は低い傾向にあることが分かります。

※月給は「賃金構造基本統計調査」の「きまって支給する現金給与額(企業規模計10人以上)」に12カ月を掛け、ボーナスとして「年間賞与その他特別給与額」を足して算出

出典:
賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
令和3年分 民間給与実態統計調査|国税庁

栄養士の職場別の給料

職場の規模によっても栄養士の給料は変動します。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(2021年)によると、企業規模ごとの給料は以下の通りです。

  • 10~99人:24万1,000円
  • 100~999人:25万6,100円
  • 1,000人以上:26万7,100円

従業員数の多い企業ほど給料も高くなることが見て取れます。また、給料の内訳は以下の通りです。

  • 10~99人:基本給23万4,900円・諸手当6,100円
  • 100~999人:基本給24万7,800円・諸手当8,300円
  • 1,000人以上:基本給24万7,800円・諸手当1万9,300円

100~999人と1,000人以上の職場の基本給に、違いはありません。しかし、基本給以外の諸手当の金額を見ると、職場の規模が大きくなるほど手当の額も上がるといえるでしょう。

出典:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

栄養士の年齢とキャリア別の給料

栄養士の給料は、年齢やキャリアの長さによっても違いが生じます。年代別の給料を比較してみましょう。

  • 20~24歳(勤続年数1.6年):21万7,700円
  • 25~29歳(勤続年数3.8年):23万4,800円
  • 30~34歳(勤続年数6.3年):23万9,900円
  • 35~39歳(勤続年数9.6年):26万5,300円
  • 40~44歳(勤続年数10.7年):27万1,900円
  • 45~49歳(勤続年数12.7年):28万5,400円
  • 50~54歳(勤続年数15.7年):29万1,400円

新卒で働き始めて50代まで勤続したと想定すると、年齢が上がりキャリアが長くなるにつれて、給料が増えていくことが分かります。

出典:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 5 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

栄養士の給料が安い理由

電卓とお札と小銭

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栄養士と給与所得者全体の平均給料を比較すると、栄養士の給料は低い傾向にあることが分かりました。なぜ栄養士の給料は安くなるのでしょうか。具体的な理由を3つ挙げて説明します。

栄養士の資格がなくても仕事ができる

栄養士の仕事は資格を持っていなければでできない「業務独占資格」ではないことが、理由の1つとして挙げられます。業務独占資格とは、医師や看護師のように資格保有者だけがその仕事に従事できる資格を指します。栄養士は「名称独占資格」であり、栄養士と名乗るために必要なものです。

栄養指導や献立の作成は、栄養士の資格を保有していない人でもできるため、誰でもできる仕事と捉えられて給料も安くなる傾向にあると考えられるでしょう。また管理栄養士と比較しても、一般的な栄養士の給料は安くなります。

利益を生みにくい職種

栄養士の仕事は大きな利益を生みにくいという点も、給料が安い理由といえそうです。病院などでの栄養食事指導には、診療報酬が発生します。

しかし、そもそも栄養指導の診療報酬で得られる点数は、他の報酬に比べて低く設定されています。さらに、医療機関での給食には1食あたり640円(一般的なケースでは「1患者が460円、医療保険が180円と分担して負担する)と定められており、病院や介護施設が上限なく設定できるわけではないため、栄養士の人件費

患者への給付分が460円と定められているため、病院に給付されるのは残りの180円です。この金額は上限なので、原材料費の高騰などが起こると赤字になるケースもあり、栄養士の努力で利益を生み出すことは不可能です。

総合的に見て、栄養士が担当する業務は利益創出との関連が小さいと見なされ、給料も安くなるといわれています。

キャリアが中断される

栄養士は女性の割合が高い職種のため、結婚や出産などのライフイベントに伴いキャリアを途中で断念せざるを得ない人も少なくありません。

栄養士の給料は年齢やキャリアを重ねるにつれて上がっていくとはいえ、途中で離職してしまうと、再就職の際に前職退職時と同じ金額の給料からスタートするのは困難です。

栄養士の基本給を年齢・経験年数別に示したデータを見ると、29歳まで5年間勤務すれば基本給は22万円強になります。しかし、仮にそこで退職して35歳で再就職したとすると、1年目の基本給は21万円弱まで下がってしまうのです。

出典:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 10 職種(小分類)、年齢階級、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

栄養士が働いている職場

調理をする手元

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栄養士に対して、食事指導や栄養指導が主な仕事というイメージを持つ人も多いでしょう。しかし栄養士としての仕事は、そのほかにもいろいろあります。栄養士がどのような場所で働いているか、具体的に見ていきましょう。

病院・福祉施設

病院や福祉施設で働いている栄養士の仕事は、主に入院患者や施設入居者への栄養相談・栄養指導・食事管理・調理・食事の提供などです。

献立作成なども行いますが、病気で食事制限がある人の栄養指導や食事管理は治療の一環として位置付けられているため、管理栄養士の資格がなければ携われません。

また、通常の食事が困難な高齢者への食事指導も、専門知識のある管理栄養士の仕事です。

学校・保育園・幼稚園

学校で働く栄養士には、学校栄養職員と栄養教諭の2つがあります。栄養士の資格のみを保有している場合は学校栄養職員となり、主に学校給食に関する栄養管理や衛生管理などを行います。

一方、栄養教諭は児童に食育や個別の栄養指導を行うことも可能ですが、栄養士の資格の他に栄養教諭普通免許が必要です。

保育園や幼稚園で働く栄養士も、給食の献立作成・発注業務・調理・栄養指導などを行います。

しかし、離乳食が必要な赤ちゃんから幼児までと食事の内容が幅広くなるため、栄養バランスだけでなく、味覚にも工夫した食事作りが求められます。

一般企業

食品関連の企業で、商品の企画や開発などに携わっている栄養士もいます。商品の企画開発では、新商品のレシピ考案や試作などのほかに、市場調査やパッケージに記載する栄養成分表示の作成なども担当します。

原材料の分析や商品の成分分析など、品質管理業務に携わっている栄養士も少なくありません。勤務している企業によっては、健康食品や機能性表示食品のように、科学的なデータを必要とする商品を開発するケースもあります。

また、商品の開発には直接携わらず、病院やドラッグストアなどを訪問して、科学的な観点から自社製品を説明する営業職として活躍している栄養士もいるのです。

栄養士が給料を上げるには?

勉強机

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栄養士の給料は安いといわれていますが、高収入を狙えないわけではありません。栄養士が給料を上げる方法を4つ紹介します。

管理栄養士の資格を取得する

栄養士より上位の管理栄養士資格を取得する方法があります。栄養士は都道府県知事の免許を受けた資格ですが、管理栄養士は厚生労働大臣の免許を受けた国家資格です。

病院や福祉施設では、管理栄養士の資格を持っていなければできない仕事もあり、一般的に栄養士より管理栄養士の方が給料は高いといわれています。

管理栄養士の資格を取得すれば、仕事の幅が広がり、結果的に給料アップにつながる可能性もあるでしょう。

他の関連資格も取得する

栄養士や管理栄養士の他にも、栄養や健康などに関連した資格を取得するのもおすすめです。

例えば、公認スポーツ栄養士の資格を取得して、大学や専門学校などの研究教育機関で活躍している人もいます。

栄養経営士の資格を取得すれば、病院や施設などの経営層に対して、栄養管理チームのマネジメントに関する提案などを行うことも可能です。

フードスペシャリストの資格を取得し、専門性を駆使して食品の開発製造から流通まで、広範囲な分野で活動している人もいます。

栄養士としての知識に加えて、さまざまな専門分野の知識も身に付けることで、さらなるキャリアが広がるでしょう。

公務員を目指す

難易度は高いものの、試験を受けて公務員の管理栄養士を目指す方法もあります。公務員には国家公務員と地方公務員があり、国家公務員の方が給与は高いのが一般的です。

国家公務員の管理栄養士になると、国立病院や自衛隊など国が管轄する機関に勤務できます。地方公務員の勤務場所は、地方自治体が管轄する公立学校や病院、保健所などです。

給料は民間企業の額を大きく上回ることはないものの、安定している点が大きな魅力といえるでしょう。

育休や時短勤務などの制度や福利厚生もしっかりしているので、出産や育児を経験してもキャリアを諦めず働き続けられたり、年齢とともに昇進や昇給が見込めたりといったメリットもあります。

給料の高い職場に転職する

栄養士の給料は勤務先によっても異なるので、給料の高い職場に転職するのも1つの手段です。

栄養士の給料が高いといわれている職場として、大手の食品メーカーや給食センター、病院などがあります。中でも給食センターは、比較的給料が高い傾向にあるようです。

企業の規模によっても給料は上下するので、転職サイトなどでしっかりチェックしましょう。また給料面だけでなく、福利厚生なども確認することが大切です。

転職先探しには、求人数が豊富な転職サイトを活用するのがおすすめです。国内最大級の求人数を誇るスタンバイなら、さまざまな条件で求人検索できるため、自分に合った転職先を探せるでしょう。

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栄養士は働く場所で給料も変わる

料理をする手元

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栄養士の給料は安い傾向にあるとはいうものの、働く場所によっては平均額より高収入になるケースもないわけではありません。

年齢や経験に伴い給料も上がっていくため、これから栄養士を目指す人は、栄養士としての実績を積みながら、次のキャリアへとステップアップしていくのもおすすめです。

栄養士の資格だけでなく、上位資格である管理栄養士や、さまざまな関連資格を保有することで、活躍する場所も広がるでしょう。

【監修者】転職コンサルタント・心理カウンセラー・著者。 国家資格2級キャリアコンサルティング技能士・産業カウンセラー。 キャリアの専門家として就職指導や職業訓練校、大学講師、ハローワークや公共機関等の相談員歴29年。心理カウンセラーとして心の問題もケアする。著書複数。NHK総合の就活ドラマも監修。 公式HP:https://careerconsultantlink.com/ 著書:「オンライン就活は面接が9割」https://amzn.to/4cbdhPv「本気で内定!面接対策」https://amzn.to/3VzCdKX