CADオペレーターは資格や経験を必要としない求人があり、未経験者でも挑戦できます。正社員の平均年収は388万円で、専門分野を作るとキャリアパス形成に有利です。今後はAIに代替される業務も考えられますが、需要はなくならないでしょう。
この記事のポイント
- CADオペレーターに求められるスキル
- CADオペレーターにはCAD操作スキルやコミュニケーション能力が求められます。
- 持っていると転職に有利な資格がある
- 必要な学歴や年齢制限はないものの、資格があれば有利で実務経験が重視されます。
- AIに負けない分野の仕事がある
- CADオペレーターの携わる分野は広く、AIが導入されても需要はなくなりません。
CADオペレーターの仕事について
CADオペレーターとはどのような仕事でしょうか。ここでは、CADの意味・定義から解説します。
CADの言葉の意味
CADとは「Computer Aided Design」の略です。主にコンピューターを使い、平面的、または立体的な設計図を作成する業務を指します。
CADオペレーターの業務内容
CADオペレーターは設計者の指示に従い、建築・土木系や機械系、電気・電子系の施工用データを作成します。デザイナーと混同されやすい職種ですが、デザインや設計を考えるポジションではありません。
建築や土木の設計分野では、設計者の指示からCADを使って図面や完成予想図を作成します。機械設計分野では、製作物の立体形状を描き、データをもとに金型や試作品を作成します。
CADオペレーターの仕事で求められるスキル
CADオペレーターに求められるスキルは、大きく4つあります。CAD操作知識はもちろん、図面の理解力、コミュニケーションスキル、正確な作業能力が必要です。
CADソフトウェアの知識と操作スキル
CADオペレーターは、CADソフトウェアの知識の他、基本的なPCスキルも必須です。
業界によって使用するCADソフトは違い、汎用的な「AutoCAD」や「SOLIDWORKS」以外にも、建築や土木設計に使われる「Revit」があります。これらの基本操作はもちろん、より業務を効率的に行うための操作スキルも求められます。
図面の情報を正確に理解する能力
図面を作成するには、図面を作る目的や図面の内容、修正する場所など、さまざまな情報を正確に理解しなくてはなりません。実物が存在しない物体の図面を作るには、3次元的な構造や位置関係を把握する空間認識能力も必須です。
また、業界や用途により立体や平面など描き方が変わるため、数値や図形から適切な図面化を理解する想像力も重要です。
多職種と連携できるコミュニケーション能力
CADオペレーターは、設計者やデザイナーと連携した業務も少なくありません。業務に関係する疑問や課題点を解消するため、適切に意見交換をするためのコミュニケーション能力が必要です。
コミュニケーション不足のまま業務を進めると、指示がきちんと伝わらず、設計者の意図が反映されていない図面に仕上がるリスクがあります。さらに、確認漏れや修正が遅れるトラブルの原因にもなります。
緻密な業務を遂行できる
CADで図面を作る際は、業務に集中して取り組まなければなりません。図面におけるミスは、実物を製造したときに欠陥箇所となります。ミリ単位の誤差も発生しないよう、正確な数値と図形の入力が続けられる几帳面さと集中力が要求されます。
CADオペレーターの雇用形態と年収
CADオペレーターの収入は雇用形態により異なります。ここでは、正社員、派遣社員、アルバイト・パートの収入について解説します。
※一般的に給料は基本給を指し、諸手当を含めませんが、本記事では諸手当を含めた給与を給料としています。
正社員の平均年収は388万円
求人情報一括検索サイト「スタンバイ」に掲載されている求人統計データをもとにした2025年2月の実績値では、正社員CADオペレーターの平均年収は388万円です。なお、年収の中央値は398万円です。
出典:スタンバイ「CADオペレーター」求人の給与・年収・時給情報
派遣社員の平均時給は2,048円
派遣社員は契約次第で勤務期間が変動し、年間を通して働くとは限りません。そのため、収入は時給単位で算出します。
求人情報一括検索サイト「スタンバイ」の統計データをもとにした2025年2月の実績値では、派遣社員CADオペレーターの平均時給は2,048円です。
しかし、派遣社員は即戦力を求められるケースが多く、本人のスキルや経験次第では高額の時給も期待できます。また、さまざまな企業に派遣されるため、多様な業界やプロジェクトを体験でき、短期間でもキャリアアップを図れる可能性があります。
出典:スタンバイ「CADオペレーター」求人の給与・年収・時給情報
アルバイト、パートの平均時給は1,416円
アルバイト・パートはフルタイム勤務に限らない柔軟なスケジュール調整が可能です。短時間の勤務が可能なため、副業にも向いています。
求人情報一括検索サイト「スタンバイ」の統計データをもとにした2025年2月の実績値では、アルバイト・パートのCADオペレーターの平均時給は1,416円です。
出典:スタンバイ「CADオペレーター」求人の給与・年収・時給情報
CADオペレーターに実務経験や年齢制限はある?
CADオペレーターへの就職は実務経験があるほうが有利ですが、必要な資格や年齢制限はありません。実務経験があれば、シニア層でも長く働ける仕事です。
未経験でも挑戦できる
CADオペレーターになるために必要な学歴や資格はありません。入社前の学習期間や実務経験は「特に必要無し」と定めているところが多く、実際に働いている人の経歴もさまざまです。そのため、未経験者でも挑戦できる分野といえます。
ただし、コンピューター操作の基礎的な知識は必須です。また、CADの機能を理解していないと業務は困難なため、ある程度の専門知識や技術習得の意欲は必要でしょう。
年齢制限はない
CADオペレーターに年齢制限はありません。定年退職後も技術と経験を生かし、セカンドキャリアとして働くことも可能です。
厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」によると、全国にいるCADオペレーターの平均年齢は41.8歳です。
求人情報一括検索サイト「スタンバイ」でも「シニア活躍中」の条件でCADオペレーターの求人は全国で3万件以上あり、シニア層のCADオペレーターも長く活躍できます。
CADオペレーターの転職で有利な資格
CADオペレーターになる上で必須の資格はありませんが、就職や転職に有利な資格は存在します。受験資格に制限がない資格を取得すれば、アルバイト・パートから正社員雇用へのキャリアアップにもつながるでしょう。
CAD利用技術者試験
CAD利用技術者試験は、一般社団法人コンピュータ教育振興協会(ACSP)が主催する資格試験です。CADエンジニアを育成する目的で、以下の試験があります。
- 2次元CAD利用技術者試験基礎
- 2次元CAD利用技術者試験 1級(建築、機械、トレース)2級
- 3次元CAD利用技術者試験 1級、準1級、2級
受験制限がないカテゴリは以下の通りです。
- 2次元CAD利用技術者試験基礎
- 2次元CAD利用技術者試験2級
- 3次元CAD利用技術者試験2級
建築CAD検定試験
建築CAD検定試験は、一般社団法人全国建築CAD連盟が主催するCADを使った建築用図面作製の資格試験です。試験の種類は以下の通りで、受験資格は4級のみ規定があります。
- 準1級
- 2級、準2級
- 3級
- 4級(高校の団体受験のみ)
なお、試験内容・採点方法の整備が困難との理由から、1級の試験はありません。
オートデスク認定資格プログラム
オートデスク認定資格プログラムは、オートデスク認定トレーニングセンター(ATC)が主催するCADスキルの認定資格です。
全世界共通で実施される試験で、CADを扱う幅広い職種に対応しています。CAD初心者やプロの設計者を目指す社会人に最適な資格です。
CADオペレーターのキャリアパス
CADオペレーターが目指すキャリアパスには、以下の3つが考えられます。
- 専門分野への特化
- 組織の管理職を経験
- BIMオペレーターへ転身
専門分野に特化する
キャリアの最初の段階では、専門分野のスキルを身につけることが重要です。同時に建築士などの資格も取得し、キャリアアップを目指しましょう。例えば、建築業界でBIMスペシャリストを目指す場合、意匠設計・構造設計に特化する道があります。
組織の管理職を目指す
管理職は、プロジェクトマネージャーとして組織をけん引するポジションです。プロジェクトの管理や若手の育成に携わるため、コミュニケーション能力の重要性が増します。
まずはチームリーダーとして、予算や納期の管理、人員の育成を担当し、プロジェクトマネージャーに必要となるマネジメントスキルを段階的に伸ばしましょう。業界事情を把握し、次のキャリアパスを定める情報収集能力も重要です。
BIMオペレーターに転身する
キャリアパスの一例としてBIMオペレーターを目指すケースがあります。「BIM」とは「Building Information Modeling」の略で、大規模物件の設計や施工管理に活用されるシステムです。
大手ゼネコンでの需要が高く、国土交通省でも建築BIM加速化事業を進めています。そのため、BIMオペレーターの人材需要も増加傾向です。
大規模建築物を扱うBIMオペレーターは、建築用3Dモデルの作成だけでなく、BIM業務のマネジメントも担当するケースがあります。CADオペレーターとしての技術と経験に加え、専門的知識が求められる業務です。
CADオペレーターに将来性はある?
AIの進歩により、デスクワークの省人化が進むといわれています。CADオペレーターの仕事にも影響はあるのでしょうか。
CAD自体はなくならない
現代のものづくりにおいて、CADは必須の技術といえます。生活で使用する物品のほとんどを工場で大量生産するため、形状やサイズの正確なデータは必要不可欠です。
また、都市計画やインフラ整備の需要は今後も続きます。特に老朽化した設備の交換や改修時期を迎えるインフラ施設は全国にあり、これらを設計するCADの役割はなくならないでしょう。
AIに代替されるであろう業務も一部ある
CADオペレーターの需要はなくならないものの、AIで代替可能な業務は置き換わると考えられます。例えば、図面修正やトレース作業は、計算やパターン認識に優れるAIで省力化が可能です。
一方、設計作業にはゼロからアイデアを生み出す創造性が欠かせません。また、プロジェクト進行中に予想外のアクシデントが発生した場合、人による柔軟な対応判断とチーム全体をまとめるコミュニケーション能力が必要です。
CADオペレーターの魅力・やりがい
CADオペレーターの仕事には多くの魅力ややりがいがあります。ここでは、具体的な例を3つ紹介します。
担当した図面が形になる
CADオペレーターは、プロジェクトの一員として設計や修正を担当します。何度も図面を修正しながら作り上げた設計が実際の建築物として完成した瞬間は、大きな達成感を得られるでしょう。
意見のすり合わせに苦労したり、納期に追われたりした分、完成時の達成感はひとしおです。
幅広い分野で活躍できる
CADは建築・自動車・航空・インテリア・福祉といったさまざまな分野で活用されているため、CADオペレーターの活躍の場は広がっています。
特に3次元CADの需要は高まっており、BIMを導入する建築業界だけでなく、電化製品や生産設備の設計にも使われています。今後も需要の増加が見込まれるため、幅広い業界で活躍するチャンスがあるでしょう。
年齢を問わず働ける
CADオペレーターになるために特別な学歴や資格は必要ありません。そのため、未経験者でも挑戦しやすい仕事です。また、年齢制限もないため、シニア層が活躍するケースも多く見られます。
CADオペレーターへの転職活動を成功させよう
CADオペレーターには、図面を正しく理解する力やチームで円滑に作業を進めるためのコミュニケーション能力が求められます。必要な資格や経験、年齢制限はないものの、未経験者は資格を取得しておくと有利です。
求人情報一括検索サイト「スタンバイ」では、CADオペレーターの求人情報が多数掲載されています。すでに実務経験がある人はもちろん、未経験から挑戦したい人もぜひ一度チェックしてみてください。