インターネット市場の拡大に伴い、ますます需要が高まるグラフィックデザイナーの仕事は、未経験でもできるのでしょうか?未経験からグラフィックデザイナーを目指す上で必要なスキルや資格、グラフィックデザイナーになる方法について紹介します。
グラフィックデザイナーはどんな仕事?
一言でグラフィックデザイナーといっても、デザインする対象はさまざまです。まずは、グラフィックデザイナーの主な仕事内容について知りましょう。
デザインを企画・制作する
グラフィックデザイナーは、パンフレット・広告・看板・商品パッケージなど、紙媒体やwebサイトに掲載するデザインの企画・制作を行います。勤務先や担当によっては、ゲームのキャラクターや背景、アイテムなどをデザインする場合もあります。
クライアントが消費者に対して伝えたい情報やメッセージなど、相手のニーズをくみ取り、デザインとして再現するのが主な仕事です。
また、大掛かりなプロジェクトの場合は、コピーライターやフォトグラファーなどと連携して作品を制作するケースもあります。
グラフィックデザイナーに必要なスキルは?
グラフィックデザイナーになるには、どのようなスキルが必要なのでしょうか?グラフィックデザイナーに求められる3つのスキルについて説明します。
デザイン力
グラフィックデザイナーとして働くには、レイアウトや色彩、タイポグラフィーなど基本的なデザインスキルが必須です。
クライアントの希望を正確に反映するのはもちろん、消費者の心をつかむ訴求力の高いデザインを考案するためには、効果的な配置や色などについて理解しておくことが求められます。
おしゃれなデザインを生み出す美的センスも重要ですが、黄金比や色相環などのデザイン理論についても学ぶ必要があるでしょう。
センスも知識も勉強することで磨きをかけられるため、「自分にはセンスがないから無理だ」と諦めず、コツコツ努力することが大切です。
コミュニケーションスキル
デザイナー職に対して、1人で黙々と作業するイメージを持っている人も多いかもしれませんが、実際には他者とのコミュニケーションが数多く発生します。
クライアントの意図を正しくくみ取るためにも、コピーライターやアートディレクターなど関係者とうまく連携するためにも、コミュニケーションスキルは不可欠です。
相手の話を注意深く聞く力と自分の考えをしっかり伝える力を、バランスよく備えていると、クライアントのニーズを満たしつつ、自分のセンスも発揮できる作品を作れるでしょう。
プレゼンテーションスキル
グラフィックデザイナーの仕事では、クライアントに対して自分がデザインした作品について説明するシーンも多々あります。
「なぜこのようなデザインにしたのか?」「どういう意図があるのか?」をクライアントに正しく理解してもらうためには、プレゼンテーションスキルも必要です。
デザインの意図を説明できないと、独り善がりなデザインだと思われてしまう可能性もあるため、論理的に話す力や相手を引きつける話し方などを習得しておくといいでしょう。
SDS法やPREP法など、プレゼンテーションのフレームワークに沿って話すと、説得力も増します。
グラフィックデザイナーにおすすめの資格
グラフィックデザイナーになるのに特別な資格は必要ないものの、資格があることで普段の仕事はもちろん、就職や転職に有利に働くケースも少なくありません。グラフィックデザイナーの仕事に生かせる3つの資格を紹介します。
Illustratorクリエイター能力認定試験
Illustratorは、文字や図形、画像を組み合わせてデザイン・レイアウトを作成できるAdobe社のグラフィックツールです。
「Illustratorクリエイター能力認定試験」では、Illustratorを使ったグラフィックコンテンツの制作能力を測れます。
スタンダードとエキスパートの2種があり、エキスパートでは実技に加えて知識問題が出題されます。
Illustratorはグラフィックデザインには欠かせないソフトであるため、資格を持っていることで、実践的なスキルがあることをアピールできるでしょう。
Photoshopクリエイター能力認定試験
「Photoshopクリエイター能力認定試験」は、画像の加工や編集ができるAdobe社のソフトであるPhotoshopを使って制作したコンテンツをもとに、活用能力を評価・認定するものです。
「Illustratorクリエイター能力認定試験」と同様にスタンダードとエキスパートの2種類があり、スタンダードでは基本的な操作を問題なく行えること、エキスパートではさらに独自性の高いデザインができることが証明できます。
Photoshopが使えることを応募条件にしている求人も多いため、資格を持っていると強みになるでしょう。
色彩検定
文部科学省の後援を受ける資格である「色彩検定」は、色に関する知識や技術を問う試験です。デザイナーだけでなく、販売職や建築家など多くのジャンルの人が受験しています。
上から1級・2級・3級・UC級の4つのレベルがあり、UC級では色覚の多様性に配慮したユニバーサルデザインについての知識を深めることが可能です。
グラフィックデザインにおいて配色は非常に重要な要素であるため、色彩についての資格を持っていると、仕事において非常に役立つでしょう。
グラフィックデザイナーになる方法
グラフィックデザイナーになる上で決まったルートはありません。いくつかの選択肢があるので、自分の状況や希望に合った方法を選択しましょう。
スクールに通う
グラフィックデザインについてのスキルや知識がない状態からスタートする場合は、スクールに通って基礎から学ぶのが近道です。
数カ月の短期講座や2年かけてじっくり学ぶコースなど、スクールによって期間やコースはさまざまなので、立場や予算などに合わせて選ぶといいでしょう。
また、「仕事をしながら通えるか?」「実践的なスキルが習得できるか?」「就職支援が充実しているか?」といった点も、スクール選びにおいて重要なポイントです。
独学で学ぶ
スクールには通わず独学でデザインを学ぶのも1つの方法です。グラフィックデザインに関する知識は、インターネットや書籍から手軽に入手できます。
また、近年では動画サイトにも多くの解説動画がアップされているため、独学でも学べる環境が整っています。
ただし独学の場合は、自分の作品へのフィードバックや直接質問できる機会がないのがデメリットです。
モチベーションの維持も大きな課題となるため、目的やスケジュールを明確にして、着実に進むための自己コントロール力が必要でしょう。
未経験者可の求人に応募する
未経験者可の求人に応募して、働きながら現場で実務経験を積むという方法もあります。未経験者の場合はアシスタント業務からスタートするケースが多いですが、デザイナーの仕事を間近で見ながらスキルを習得できるのは大きなメリットです。
しかし会社側としては、知識もスキルもないまったくの未経験者を採用するメリットはないため、かなり狭き門になるでしょう。
未経験だけど働きながらスキルを習得したいという人は、資格取得や作品作り、ポートフォリオの作成など、経験不足をカバーできるアピールポイントを用意しておくのがおすすめです。
グラフィックデザイナーの就職先
グラフィックデザイナーとして活躍できる舞台はさまざまです。就職先によって仕事内容も異なるため、入社後にイメージとのギャップが生まれないよう、しっかり企業研究を行いましょう。
広告代理店・広告制作会社
広告代理店や広告制作会社では、テレビ・雑誌・新聞など、さまざまなメディアで用いる広告の企画や制作を行っています。
クライアントの会社や商品を世に広める役目を担っており、大規模なプロジェクトを任させるチャンスも比較的多いといえるでしょう。
また、デザイナーとしてのキャリアを積めば、アートディレクターやクリエイティブディレクターなど、統括ポジションへのキャリアアップも期待できます。
「多くの人が目にするデザインを担当したい」「自分の作品をテレビで見たい」という目標がある人におすすめです。
デザイン事務所
デザイン事務所は、その名の通りデザインを制作する会社であり、その対象はさまざまです。出版社から依頼されて書籍の装丁を担当したり、パッケージのデザインやロゴを作成したりと、仕事内容は多岐にわたります。
大きな会社では、ロゴデザイン・Webデザイン・キャラクターデザインなど、分野ごとに部門が分かれている場合もあるでしょう。一方、個人事務所ではジャンル問わず担当する可能性があるなど、会社の規模によっても担当する業務は異なります。
明確にやりたいことがある人は、自分が希望する仕事に携われるかどうかをしっかりリサーチしてから入社することが大切です。
独立する
広告制作会社やデザイン事務所などである程度実績を積んでから、フリーランスとして独立するケースも少なくありません。
組織に属している場合と違い、独立すると営業からデザイン、事務作業まで、すべて自分で管理する必要があります。デザインの実力はもちろん、人脈も必要になるため、経験とネットワークをコツコツ広げていくことが重要です。
裏返せば、自分の努力次第で案件も収入も増やせる可能性は無限大です。グラフィックデザイナーのスキルに加えて、WebデザインなどWeb関連の知識も持っておくと、仕事の幅が広がるでしょう。
スキルを磨いてグラフィックデザイナーを目指そう
グラフィックデザイナーは、未経験からでも目指せる仕事です。デザイン力やコミュニケーション能力など必要なスキルを磨き、希望する会社でグラフィックデザイナーとして活躍しましょう。
また、情報社会である現代では、独学で知識やスキルを習得することも十分に可能です。短期集中で実力をつけたい場合はスクール、働きながらゆっくり知識を習得したい場合は独学など、状況に合わせてペース配分を自分で決められるのもポイントです。
自分自身の目的や目標を明確にし、夢に向かって着実に進んでいきましょう。