高卒で警察官になるには?警察官になるまでの流れや試験内容を解説

高卒で警察官を目指す人も多いでしょう。警察官になるには、どうすればよいのでしょうか。高卒が警察官になる方法や試験の内容、採用されるまでの流れなどについて解説します。試験対策も紹介しているので、受験を考えている人は参考にしてください。

高卒でも警察官になれる?

警察官の後姿

(出典) pixta.jp

警察官の種類によっては、高卒からでも目指すことは可能です。高卒の人が警察官になる方法を、具体的に見ていきましょう。

警察官は2種類ある

警察官には、警察庁に所属する警察官と、各都道府県の警察本部に所属する警察官の2種類があります。警察庁は警察全体を取りまとめる国の行政機関で、内閣総理大臣の下に置かれる「国家公安委員会」に含まれる組織の1つです。

一方、都道府県警察は、各自治体に本部が置かれている警察組織です。通常「〇〇県警察本部」という名称になりますが、東京都の場合は東京都警察本部とはいわず、「警視庁」と呼ばれます。都道府県内の各地域に警察署が置かれており、市民の安全を守っています。

警察庁の警察官は国家公務員ですが、都道府県警察の警察官は地方公務員です。都道府県警察の上層部は、警察庁から出向した国家公務員が務めることもあります。

高卒は地方公務員の警察官になるのが一般的

高卒の場合は、都道府県警察の警察官を目指すのが一般的です。警察庁に所属する警察官の受験資格は、大卒か大学院卒がほとんどです。高卒が受験できる職種もありますが、採用人数がわずかなので合格する確率はかなり低いといってよいでしょう。

都道府県の警察官の受験資格や試験の実施時期などは、地域によって異なります。例えば、警視庁の場合は、試験区分は大卒程度の「1類」と高卒程度の「3類」に分かれています。高校卒業見込みの人だけでなく、既卒でも30歳前後までは受験が可能です。

試験は、1次試験と2次試験に分かれています。例年、1次試験の実施から約1カ月後に2次試験を行います。

高卒で警察官になる難易度

警察官の採用試験の難易度も、都道府県によって異なります。例として、警視庁の3類(高卒程度)の合格倍率を見てみましょう。合格倍率は男性警察官・女性警察官に分けて発表されています。

【男性警察官】

  • 2022年度:10.3倍(受験者数2,492名・合格者数243名)
  • 2021年度:8.5倍(受験者数1,344名・合格者数158名)
  • 2020年度:7.2倍(受験者数1,543名・合格者数213名)

【女性警察官】

  • 2022年度:6.3倍(受験者数933名・合格者数148名)
  • 2021年度:6.5倍(受験者数506名・合格者数78名)
  • 2020年度:6.5倍(受験者数530名・合格者数82名)

女性は1類(大卒程度)でも合格倍率はほとんど変わりませんが、男性は1類(大卒程度)よりも合格倍率が高く、難易度が高いといえます。

参考:採用案内(警察官) | 採用情報 | 令和5年度警視庁採用サイト

高卒警察官の収入・キャリア

電話する警察官

(出典) pixta.jp

都道府県の警察官として配属されると、地方公務員の基準に合わせて給与や待遇が決まります。高卒警察官の収入や、キャリアについて紹介します。

給与は地方公務員の公安職に相当

都道府県の警察官は地方公務員の公安職に当たるため、給与は都道府県によって異なります。一般的に、地方公務員の給与は、基本の給料月額に各種手当を加算して計算されます。

例えば、警視庁の場合、高卒警察官の初任給は22万1,800円です(2023年1月1日現在)。この額には、すでに20%の地域手当が加算されていますが、条件を満たしていれば住居手当・通勤手当・特殊勤務手当なども支給されます。

高校卒業後に企業などで働いた経験がある場合は、一定の基準で手当が加算されることもあるようです。また、賞与に当たる期末・勤勉手当は、大卒・高卒ともに年間で約4.55カ月分が支給されます。

参考:給与・昇任制度|令和5年度警視庁採用サイト

昇任は学歴を問わない

警察官は、学歴や性別を問わずキャリアアップが可能です。警察官のキャリアアップには、試験による昇任と、勤務成績や勤務年数に基づく昇任の2種類があります。各役職への昇任試験には受験資格が定められています。

例えば高卒の場合、巡査から巡査長へ昇任するには4年以上の勤務実績が必要です。その後さらに昇任し、巡査部長として3年以上勤務すると、警部補への昇任試験を受験できます。

学歴だけを基準とせず平等に昇任できる制度なので、本人の努力次第ではさらに上の警部や警視などへのキャリアアップも可能です。

警察官に必要な適性や能力は?

交番の看板

(出典) pixta.jp

警察官にはどのような人が向いているのでしょうか。求められる適性や能力について解説します。

正義感・倫理観

警察官には、正義感や倫理観が求められます。正義感とは、道徳的な価値観に基づいて公正な判断を下せることです。法律に従い、個人的な偏見などを持たず罪を犯した人に向き合うためには、公正な判断力が必要です。

地域社会を犯罪から守って秩序を維持するためにも、強い正義感や使命感がなければ職務を果たし続けることは困難でしょう。

また、警察官は地域住民から信頼される立場でなければなりません。住民からの信頼を得るためには、モラルを守った行動をとることも重要です。

協調性・コミュニケーション力

警察官には、協調性やコミュニケーション力も必要です。警察の仕事は、さまざまな専門性を持った警察官が協力しながらチームで進めていくものなので、協調性は不可欠といえます。

例えば、事件の捜査では、現場を調べる鑑識員などとも連携・協力しなければなりません。1人で勝手に捜査を進めてしまう人には、チームワークを重視する警察官の仕事は向かないでしょう。

また、事件の被害者や目撃者に事情調査を行う際にも、話を引き出すためにコミュニケーション力が求められます。

体力

犯罪を取り締まるには、タフな身体や体力も必要となります。例えば、緊急事態が起きたときは素早い動きで対応しなければなりません。場合によっては、格闘しなければならないときや、炎天下で長時間の警備に当たらなければならないこともあります。

十分な体力や運動能力がないと、これらの厳しい勤務をこなすのは難しいでしょう。特に警察官になったばかりの新人は、長時間の当番勤務などをこなす必要もあります。

高卒が警察官になるまでの一般的な流れ

試験を受ける男女

(出典) pixta.jp

都道府県の警察官の採用試験は、自治体ごとに採用条件や試験の内容が異なります。ここでは警視庁を例として、高卒者が警察官になるまでの一般的な流れを説明します。

第1次試験は筆記試験と適性検査

警視庁の採用試験は第1次試験と第2次試験に分かれています。第1次試験は、筆記試験・資格経歴等の評定・第1次適性検査の3つの科目で実施されます。

筆記試験の科目は、教養試験・論(作)文試験・国語試験の3つです。教養試験は五肢択一式で、全部で50題出題されます。出題分野は、知能分野と知識分野に分かれています。

【教養試験】

  • 知能分野: 文章理解・判断推理・数的処理・資料解釈・図形判断
  • 知識分野:人文科学・社会科学・自然科学・一般科目(国語・英語・数学)

【論(作)分試験】

  • 課題式。出題は1題

【国語試験】

  • 五肢択一式。出題数は50題

【資格経歴等の評定】

  • 柔道や剣道などの実績・情報処理などの国家資格・TOEICや英検など、さまざまな分野で保有している資格や経歴を申請し、評価されれば成績の一部にできる

【第1次適性検査】

  • 記述式で警察官としての適性を測る

第2次試験は面接と身体・体力・適性検査

第2次試験では、面接試験・身体検査・体力検査・第2次適性検査を実施します。警察官を含む公務員試験の面接では、事前に自分の氏名や住所などの基本的な情報や、志望動機などを記載した面接カードを提出します。

【面接】

  • 提出したカードの内容を中心にした質疑応答

【身体検査】

  • 身長と体重の測定・視力・色覚・聴力・運動機能・血液・尿・レントゲンなどの検査

【体力検査】

  • 腕立て伏せやバーピーテストなど、職務の執行に必要な体力の有無を検査

【第2次適性検査】

  • 記述式の検査で警察官としての適性を測る

採用後は警察学校で10カ月の研修

試験に合格すると、初任教養と呼ばれる研修を受けることになります。この期間は学歴によって異なり、高卒の場合は10カ月間です。

研修中は全寮制の警察学校で共同生活を送りながら、警察官の基礎となる一般教養・警察実務・法学・術科などを学びます。

研修を修了すると警察署に配属されますが、その後も自動二輪車(白バイ)乗務員養成講習や鑑識実務研修など、さまざまな研修や教育訓練で警察官に必要な知識や技能を学んでいきます。

高卒で警察官になるための試験対策

勉強机

(出典) pixta.jp

高卒でも警察官になれますが、採用試験の難易度は決して低くないため、十分に試験対策して臨むことが重要です。試験合格に近づくための対策を2つ紹介します。

配点が高い科目を優先的に学習する

警察官の試験内容は出題範囲が広く、問題数も多い傾向にあります。限られた時間内で効率よく点数を稼ぐには、出題数が多くて配点の割合が高い科目から優先的に学習するとよいでしょう。

第1次試験の教養試験では、知能分野の「数的処理」が出題数が多い傾向があります。

苦手意識を持つ人も多い分野ですが、過去問を繰り返し解いて解法のパターンをつかんでしまえば、世界史などのように膨大な範囲を覚える科目よりも取り組みやすいともいえます。

面接の答えを用意しておく

第2次試験の面接では、よく聞かれる質問に対して答える内容を用意しておくことが必要です。警察官の採用試験では、自己PRや志望動機などのほか、最近のニュースについて聞かれたり、警察官の不祥事について意見を求められたりもします。

地元以外の自治体の警察官に応募する場合は、「なぜその都道府県の警察を選んだのか」という理由も用意しておきましょう。

基本的には事前に提出した面接カードを中心に質問されるので、カードに記載した内容に対してしっかりと答えられるようにしておくことが大切です。

高卒でも都道府県の警察官を目指せる

警察署の前に立つ警察官

(出典) pixta.jp

高卒でも、都道府県の警察官を目指すことは可能です。学歴や性別を問わずキャリアアップを目指せるので、努力をすれば高卒でも警部や警視などのポジションに就くことも夢ではありません。

地方公務員なので、安定した収入を得られるというメリットもあります。高卒で警察官になるためには、各都道府県が実施する採用試験に合格することが必要です。試験にはさまざまな科目があるため、しっかりと対策してチャレンジしましょう。

「スタンバイ」には、地方公務員に関する求人も掲載されています。警察官の募集もあるので、ぜひチェックしてみてください。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら