事業企画とは?主な仕事内容や求められる能力・キャリアパスを解説

事業企画は、企業の未来をつくる重要なポジションです。営業企画での経験を生かしつつ、どのようなスキルを補強すれば、事業企画へステップアップができるのでしょうか?事業企画の具体的な業務内容から必要なスキル、キャリアパスまで詳しく解説します。

この記事のポイント

事業企画とは?
事業計画の立案から実行まで担う重要なポジションです。特定の事業に焦点を当てた成長戦略を担当します。
事業企画で求められる能力
リーダーシップ・マーケティングスキル・財務知識・コミュニケーション能力など多岐にわたります。営業企画の経験はこれらのスキルと関連性が高く、キャリアチェンジに有利に働きます。
事業企画の将来性
デジタル化やグローバル化の進展により、事業企画職の需要と将来性は高まっています。経営企画や経営層など、事業企画を経験した後のキャリアも多様化しています。

事業企画の仕事内容と役割

事業計画を立てるビジネスパーソン

(出典) pixta.jp

事業企画は、企業の生命線である「事業」に直接関わる重要な部門です。経営陣の方針を深く理解し、それを現場レベルに落とし込みながら事業を推進するという役割があります。

まずは、事業企画が担う主な業務などを見ていきましょう。

事業企画が担う主な業務

事業企画の中心的な業務は、経営方針に基づいた事業計画の策定と実行です。その内容は、以下のように多岐にわたります。

  • 市場調査や競合分析
  • 事業の予算組み
  • 目標設定
  • 施策の具体的提案
  • 実行計画の立案

また、進捗管理を行いながら、必要に応じて目標や施策の見直しも担当します。

新規事業を立ち上げる際には、一から新しいビジネスモデルを考え、実際に利益を生み出すまでの事業企画書を綿密に作成する必要があるでしょう。状況に応じて、他企業との業務提携や買収・合併など、外部の力を借りるプロジェクトになることもあります。

事業の収益最大化のために、いつどのような施策を打つべきかを見極め、各部門を巻き込みながらプロジェクトを推進する力が求められます。

事業企画書の作成方法

事業企画書は、事業の方向性・戦略・具体的な実行計画を示す重要な文書です。

市場分析から始め、ターゲット顧客のニーズや競合状況を把握します。次に自社の強み・弱みを分析し、差別化するポイントを明確にします。最後に、事業の目標・達成までのロードマップ・必要な予算や人員・予想される収支計画などを詳細に記載するという流れです。

特に重要なのは、数値に基づいた根拠ある計画を立てることです。市場規模・売上予測・必要な投資額・投資回収期間などを具体的な数字で示すことで、経営陣の理解と承認を得られる可能性が高まります。

また、想定されるリスクとその対策も盛り込むことで、事業の実現可能性と持続性を高めることも可能です。

効果的な事業企画書は、経営陣のビジョンと現場の実行力をつなぐ重要なツールとなり、事業の成功確率を高める役割を果たします。

企業における事業企画の立ち位置

事業企画は、経営層と現場をつなぐ橋渡し的な役割を担っています。経営陣が描くビジョンや戦略を理解し、それを実行可能な具体的な計画に落とし込み、各部門と連携しながら事業を推進するのが役目です。

企業の規模や業種によって、事業企画部門の具体的な役割や権限は異なります。事業部制を採用している大企業では、各事業部に事業企画担当が配置されることもあれば、本社機能として集約されているケースもあります。

事業企画は企業の成長エンジンを動かす重要な存在として、高い戦略性と実行力が求められるポジションです。企業の収益を左右する事業のかじ取り役として、経営層からの期待も大きく、その分やりがいと責任が伴う部門といえるでしょう。

事業企画と経営企画の違いをチェック

ガントチャート

(出典) pixta.jp

事業企画と経営企画は、どちらも「企画」という言葉が含まれるため混同されがちです。しかし、その役割や責任範囲、視点の置き方に明確な違いがあります。

機能と責任範囲が異なる

事業企画と経営企画の最も大きな違いは、視点の広さと時間軸です。

事業企画は「事業レベルでの成長戦略」を担当し、特定の事業や製品などに焦点を当てて、市場での競争力を高めるための戦略や計画を立案します。具体的には、「何を」提供し「どのように」市場に展開するかを考えるのが役目です。

一方、経営企画は「会社経営における中長期的な成長戦略」を担当し、企業全体の経営戦略や方針、組織運営の基本方針などを決定します。「なぜ」その事業を行うのか、「どれだけ」の経営資源を配分するかといった、より広い視点で企業活動全体を見渡すことに重きを置きます。

経営企画は経営陣に近い部門として、経営会議の運営や株主総会の実施なども担当するため、経営に関する深い知識と企業や社会を広い視野で分析する力が求められるでしょう。

企業規模で変わる関係性

事業企画と経営企画の関係性は、企業の規模によって大きく異なります。

大企業の場合、会社の基盤となる事業を維持しつつ、新規事業の立ち上げも行わなければなりません。そのため、事業レベルで業務を担う事業企画と、全社的な業務を担う経営企画が明確に組織化されています。

一方、ベンチャー企業の場合、事業規模が小さく、組織も小規模であるため、経営と事業の境界が明確ではありません。経営陣自らが事業の細部まで関与することも多く、事業企画と経営企画の職務が明確に分けられていないケースもあります。

自分のキャリアを考える際には、志望する企業における事業企画と経営企画の位置付けを理解することが重要です。

事業企画で求められる能力

企画書

(出典) pixta.jp

事業企画は企業の成長戦略を担う重要なポジションであり、そこで活躍するためには多様な能力が求められます。事業企画に必要とされる主要な能力について、詳しく見ていきましょう。

組織マネジメントとリーダーシップ

事業企画では、さまざまな部門と協力しながら事業を推進していく必要があります。そのため、組織全体をマネジメントする力は不可欠な要素です。

経営方針に基づいた事業計画を立案しても、全ての社員がすぐに納得するとは限りません。反発や対立が生じることもありますが、そうした状況でも粘り強く説得し、理解を得ながら進めていく姿勢が重要です。

また、事業計画を実行する際には、営業・マーケティング・開発・製造など、複数の部署を横断したプロジェクトとなることが多くあります。そのため、各部門のメンバーを適切にリードするリーダーシップも必要です。

優れたリーダーシップを発揮するためには、明確なビジョンを持ち、それを共有しながらチーム全体の力を最大化させることが大切です。特に新規事業の立ち上げでは、未知の領域に挑戦することも多いため、困難を乗り越えるための強い意志と実行力が求められます。

マーケティングスキル

事業の成功には、優れたマーケティングスキルも欠かせません。市場調査を行い、マーケットの規模を把握し、消費者のニーズを的確に捉えることが事業企画の基本です。

強み・弱み・機会・脅威分析や、フレームワークを用いた分析、顧客体験プロセスを活用したターゲット選定を行うことで、製品やサービスの開発・適正価格の設定・流通経路の確保・効果的な販促施策などに役立てられます。

近年では、デジタルマーケティングの重要性が高まっており、Web領域での戦略立案も求められます。オンライン・オフラインを融合させたマーケティング戦略を構築する力は、事業企画において非常に価値のあるスキルといえるでしょう。また、データに基づいたマーケティングの意思決定ができることも重要です。

顧客データや市場動向を分析し、そこから有益な洞察を得て戦略に反映させる能力は、激しく変化する市場環境の中で事業を成功に導くための鍵となるでしょう。

事業を支える財務知識

事業企画においては、財務知識も重要なスキルの1つです。どのように売り上げを増やすか、利益を生み出すかという点だけでなく、資金調達の方法や予算管理の在り方なども求められます。

新規事業の立ち上げ段階では赤字が続くことが多く、売り上げが伸びていても資金が確保できなければ、事業の継続は困難になるでしょう。そのため、事業の収支計画を立て、必要な投資額を算出し、投資回収期間を予測するなど、財務面での計画策定能力が求められます。

また、事業の収益性を評価するためのKPI(重要業績評価指標)の設定や、ROI(投資収益率)の分析なども重要なスキルです。経営者レベルの財務管理能力を備えていれば、自社の財務状況を正確に把握した上で、事業に関わるさまざまな意思決定を適切に行うことが可能となるでしょう。

関係者を動かすコミュニケーション能力

事業企画では、社内外の多くの関係者と協力しながら業務を進めていきます。そのため、多くの人とやりとりしながら全体のベクトルを合わせていく、高度なコミュニケーション能力が必須です。

経営陣の考えを正確に理解し、それを具体的な戦略として落とし込む力が求められます。加えて、戦略を各部門のメンバーに分かりやすく伝え、共感を得ながら行動に移してもらうことも重要です。

事業の進捗に応じて現場とのやりとりが増えていく中で、経営側の意図を現場に伝えたり、逆に現場の声を経営側に届けたりする橋渡し役も担います。

資本・業務提携やM&Aなど外部との交渉が必要な場面では、相手の立場も尊重しながら、双方が利益を得られる関係性を構築するための交渉力が必要です。

事業企画のキャリア展望

企画書を手に話をする若手社員と中堅社員

(出典) pixta.jp

事業企画は企業の中核を担う重要なポジションであり、経験を通じてさまざまなキャリアパスが開かれています。事業企画へのキャリアパスと、その先の展望について解説します。

事業企画へ至る代表的なキャリアパス

事業企画へのキャリアパスとしては、営業企画やマーケティングの経験を積むことが一般的な道筋です。営業企画での経験は、顧客ニーズの理解・市場の把握・収益構造の分析など、事業企画に必要なスキルと深く関連しています。

営業企画部門では、販売経路の新規開拓や新商品の企画立案に携わることも多く、これらの経験は事業企画への転身に大いに役立つでしょう。また、マーケティング部門での経験も、市場分析の把握やブランド戦略の立案など、事業企画に直結するスキルを養えます。

そのほか、経営コンサルティングファームでの経験・事業開発・プロダクトマネジメントなどのバックグラウンドを持つ人も、事業企画に転身するケースがあります。

事業企画経験後の流れ

事業企画での経験を積んだ後は、さらに幅広いキャリアパスが開けてきます。実績を重ねて責任あるポジションに就くことで、より大きなプロジェクトや重要な事業の企画・運営を任されるようになるでしょう。

さらにキャリアを積むと、経営企画への異動というパスも考えられます。事業企画で培った経験は、全社的な経営戦略の立案にも生かせるため、経営企画での活躍も期待できます。

事業部長や執行役員といった、経営層へのステップアップも可能です。成功した事業の立ち上げや大幅な業績改善などの実績を残せば、経営判断に関わる重要なポジションに就く道も開けてくるでしょう。

事業企画職へ転職するには

ビジネスパーソン2人の後ろ姿

(出典) pixta.jp

事業企画職への転職は、多くの人が目指す人気のキャリアパスです。しかし、即戦力として価値を発揮できる経験や能力が求められるため、転職の難易度はやや高いといえます。

営業企画の経験を生かして事業企画へ転職するための具体的なアプローチや、現在の求人動向について解説します。

営業企画での経験を生かした転職アプローチ

営業企画での経験は、事業企画への転職において大きなアドバンテージの1つです。転職を成功させるためには、自分の持つ営業経験や知見を、どのように事業企画の職務に生かせるのかを明確に示すことが重要です。

例えば、営業企画での顧客折衝経験は、事業企画における社内外の関係者との調整に役立ちます。営業数値の分析・管理経験は、事業計画の策定や進捗管理に直結するスキルです。面接では、具体的な成功事例やどのように課題を解決したかなどを交えながら、自分の強みをアピールしましょう。

事業企画の収入レンジと求人動向

事業企画の年収は、経験・能力・企業規模によって大きく異なります。スタンバイの職業種別の給与・年収・時給情報によると、事業企画の平均年収は502万円(2025年2月時点)です。

ただし、キャリアの発展に伴い、一般的には600万〜1,200万円程度の範囲まで上昇する可能性があります。特に大手企業やグローバル企業では、責任あるポジションになると1,000万円を超えることもあるようです。

求人市場では、IT・通信業界、コンサルティングファーム、メーカーなどさまざまな業界で事業企画人材の需要が高まっています。特にデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や、新規事業開発へのニーズの高まりが背景にあります。

出典:「事業企画」求人の給与・年収・時給情報|スタンバイ

事業企画へのキャリアチェンジを成功させよう

スーツケースを引くビジネスパーソン

(出典) pixta.jp

事業企画は、企業の成長戦略を担う重要なポジションです。適切なスキルと経験があれば、営業企画からのキャリアチェンジは十分可能です。

営業企画で培ったマーケティングスキルやコミュニケーション能力は、事業企画でも大いに生かせますが、加えてマネジメント力や財務知識なども求められます。

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