「補償コンサルタント」とは、一体どのような仕事なのでしょうか?補償の定義や、補償コンサルタントの基本的な仕事内容について解説します。また、補償コンサルタントが活躍する場所や、関連資格についても確認しましょう。
補償コンサルタントとは
「補償業務」を仕事にする「補償コンサルタント」は、さまざまな場所で活躍しています。補償コンサルタントの「補償」とは何を意味するのか、見ていきましょう。
「補償」の定義を知ろう
「補償」は、国や自治体による公共事業で、立ち退きや営業停止が必要となった相手に対して、金銭を渡すことを指します。
移転にかかる費用や、土地の代金が主な「補償」です。本来該当の場所で居住や営業ができるはずだったものを、公共事業の都合で立ち退いてもらわなければならないため、対価が必要となります。
補償にかかる費用は、公共事業を行う国や地方公共団体が負担します。費用の原資となるのは、国民が国や自治体に納めている税金です。
公共事業の補償を担当する人・事業部を指す
補償コンサルタントは、「公共事業によって損失が生じる人への対価の支払い」を国・自治体に代わって担当する人や事業部のことです。
公共事業の補償は、役所や国の担当者が直接対応するわけではありません。補償コンサルタントと呼ばれる人や事業部が、補償にかかる費用を計算し、必要な金額を国・自治体に請求するのが基本です。
補償をするためには、交渉や土地の評価など、さまざまな手順を進める必要があります。補償コンサルタントは、補償する側とされる側の橋渡しを担う重要な役割といえるでしょう。
補償コンサルタントの仕事内容
補償コンサルタントは、対象者に適正な金額が補償されるまでの全ての業務を担います。1人で全てを行うわけではありませんが、仕事内容は多様です。主な仕事内容と特徴を紹介します。
土地や建物の計測
公共事業の補償は、土地・建物の大きさや価値によって金額が変わります。補償コンサルタントは正確な金額を導き出すために、土地や建物の計測をしなければなりません。
土地の所有者や境界を確認するため、調査も実施します。土地に関する資料の取り寄せ・確認など、計測の前にしなければならないことも多いでしょう。実際の計測も担当するため、計測に関する資格や知識を保有していると有利です。
土地の計測を含む調査は、補償コンサルタントの「土地調査部門」が主に担当します。実際の状態を確認し、現状を報告するためにも重要な仕事です。
補償対象者との交渉
公共事業を行うからといって、すぐに工事や建設に取り掛かれるわけではありません。移転や土地の買い取りが必要になった場合、補償対象者との交渉を進めなければならないためです。
補償コンサルタントは、移転が必要となった人・店舗・会社などに出向き、交渉します。交渉や説明の業務は、主に補償関連部門や総合補償部門の役割です。
また、店舗・工場などの営業に問題が出た場合は、営業補償・特殊補償部門や事業損失部門などが対応するケースもあります。
いずれにしても、補償対象者に納得してもらえるよう、きめ細かな対応が求められるでしょう。
補償金額の算定
補償コンサルタントは、資料や交渉、測量の結果などから補償金額を算定します。
移転料や土地の適正価格だけでなく、営業に支障が出るなど移転に伴う問題があれば、補償の金額に上乗せする必要があるため、正確な算定と交渉が必要です。
算定が終わると、補償対象者に金額を説明するなど、ほかにも業務があります。土地評価部門や物件部門など、土地・建物の状態によって算定に関わる部門は変わってくるでしょう。
補償コンサルタントが働く場所
補償コンサルタントは、さまざまな場所で働いています。転職を検討している場合には、候補を絞り込むためにも、主な勤務先を把握しておくとよいでしょう。
建設関連会社の補償コンサルタント部
公共事業の建設会社をサポートする関連会社では、補償コンサルタント部を設けていることがあります。
公共事業のサポートとひと口に言っても、測量・建設コンサルタント・地質調査など、業務の内容はさまざまです。いくつかの部署のうち、補償コンサルタント部に配属されれば、公共事業の補償を担当できます。
応募する場合は、補償コンサルタント部への配属が可能か、具体的な業務内容が何かを理解しておきましょう。求人の業務内容をチェックすれば、補償コンサルタント部で働けるかは判断できるでしょう。
補償を請け負うコンサルタント会社
コンサルタント会社でも、補償コンサルタントの部署を設けていることがあります。全てのコンサルタント会社が補償を担うわけではないため、補償コンサルタント部があるかは確認しておきましょう。
コンサルタント会社では、補償コンサルタントのほかに、文化財・建設・開発などさまざまな分野のコンサルタントを行っています。
補償コンサルタントだけを担当できるとは限らないため、配属部署や業務内容については応募前によく確認しておきましょう。
条件を満たす個人事務所
個人事務所でも、補償コンサルタントの業務を行っていることがあります。基本的に補償コンサルタントの営業自体に制約はなく、法人でも個人でも業務は可能です。
個人が国土交通大臣の登録を受けるには、該当の補償業務に関して7年以上の経験があるか、同程度の経験があると国土交通大臣に認められる必要があります。
そのほか、個人の場合、自己資本1,000万円以上の資金が必要です。国土交通大臣の認定を受けていなくても営業は可能ですが、経験を客観的に認めてもらうためには、補償コンサルタントとしての登録も検討しましょう。
出典:補償コンサルタント登録制度 | JCC 社団法人 日本補償コンサルタント協会
補償コンサルタントに関連する資格・称号
補償コンサルタントを目指す上で、必須の資格などはありません。しかし、管理者を目指したい、補償コンサルタントとしてより一層活躍していきたいと考えるなら、関連する資格などの取得を目指しましょう。
補償業務管理士
「補償業務管理士」は、一般社団法人日本補償コンサルタント協会が主催する検定試験です。用地補償業務に携わる人のために、民間資格として1991年に制定されました。
補償コンサルタントとして管理者になるには、長い経験が必要です。若く優秀な人材を育成・活用するためにも、補償業務管理士の資格は有用といえるでしょう。
資格取得には、日本補償コンサルタント協会が実施する研修を受け、検定試験に合格する必要があります。測量士などの資格を取得済の場合、専門科目の研修が免除されます。
出典:補償業務管理士とは | JCC 社団法人 日本補償コンサルタント協会
総合補償士
総合補償士は、補償業務管理士の中で総合補償部門に携わる者の称号です。一般の補償業務管理士と比べると、携わる業務が幅広くなっています。
補償コンサルタントの業務はもともと幅広く、さまざまな業務に対応できる人材は貴重です。公共事業における財政状況も厳しくなっていることから、総合補償部門のように工程管理やマネジメントを担当する部門は脚光を浴びています。
総合補償士は補償コンサルタント業務を迅速に進められる人材として活躍が期待されており、今後はより一層重要な役割を果たす存在となるでしょう。
出典:総合補償士とは | JCC 社団法人 日本補償コンサルタント協会
補償コンサルタントには多くの業務がある
補償コンサルタントは、公共事業の補償業務を担当する仕事です。建設関連会社やコンサルタント会社で働いている人も多いでしょう。
業務は各部門に分類され、土地調査や評価、補償対象者との交渉など、仕事内容は多岐にわたります。補償業務に携わりたい人は、転職を検討してみてはいかがでしょうか?
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