倉庫作業員は、物流センターや店舗などの倉庫内で働く作業員のことです。人手不足が生じている職種の1つであり、物流業界では重要な役割を担っています。倉庫作業員の働き方や将来性、平均年収の目安を解説します。
倉庫作業員とは何をする人?
EC市場の拡大で需要が増えている職種の1つに、「倉庫作業員」があります。文字通り、倉庫内で働くスタッフのことですが、実際にどのような仕事をしているのか知らない人も多いのではないでしょうか?
倉庫で働く作業員の総称
倉庫作業員とは、倉庫で働く作業員の総称です。倉庫内で、荷物の搬入出・検品・仕分け・ピッキング・開梱などの業務を行います。
複数の作業員が自分の仕事を黙々とこなす「流れ作業」が基本で、特別なスキルは必要とされません。ただし、1つの工程が遅延すると、全体にも影響が及ぶため、作業には一定のスピードが求められます。
EC市場の拡大により、倉庫業界の需要は右肩上がりに増えています。一部の作業は自動化が進んでいますが、倉庫作業員の需要は比較的安定しているのが現状です。
出典:倉庫作業員 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
倉庫の種類は大きく分けて3種類
倉庫には、営業倉庫と自家用倉庫があり、営業倉庫は以下の3種類に大別されます。
- 普通倉庫
- 冷蔵倉庫
- 水面倉庫(水面貯木庫)
普通倉庫は、原料や製品などを保管するための倉庫です。倉庫作業員は、物流会社や店舗が所有する普通倉庫で働く機会が多いでしょう。
冷蔵倉庫は、冷蔵装置を備えた倉庫で、常時10℃以下の温度に保たれています。畜産物・海産物・冷凍食品などが保管されるため、温度管理には細心の注意を払う必要があります。
水面倉庫は、原木などの物品を浮かべて保管する倉庫で、河口付近に設けられるのが一般的です。
倉庫作業員の仕事内容をチェック
規模の小さな倉庫は兼業もありますが、大きな倉庫は分業制が基本です。特定の作業のみに集中して取り組めるため、仕事のコツを早くつかめるでしょう。倉庫作業員が担う代表的な作業を紹介します。
荷物の搬入出
輸送トラックが倉庫に到着すると、倉庫作業員は荷物の搬入出を行います。人力で持ち上げるのが困難な荷物は、フォークリフトやクレーンを使って移動させることが多いでしょう。倉庫内では、専用のカートや台車、ハンドリフトなども使用します。
配送に向かうトラックがあれば、配送先別・方面別に出庫し、指定された時間までに荷物を積み込みます。荷物同士の高さや重量配分を考慮し、荷崩れがないように工夫しなければなりません。
入庫作業に当たっては、あらかじめ荷主と打ち合わせをし、製品の特性に合った保管方法や輸送手段ができるかを確認します。冷蔵倉庫では、外気に触れて劣化しないように、温度管理を徹底することが重要です。
商品の検品・仕分け
入庫・出庫の際には、検品と仕分けを行います。検品とは、伝票と内容物が合っているかを確認する作業です。商品名や数量を確認すると同時に、汚れや破損がないかもチェックしなければならず、最初のうちは目が疲れるかもしれません。
検品の終了後は、商品を倉庫内の指定場所に分類する仕分け作業を行います。仕分けの対象は、食品・原材料・日用品・衣類・精密機械と多岐にわたります。大きさや重量のある商品を仕分けるときは、体力を要するでしょう。
ピッキング
ピッキングは、出庫業務の1つです。出荷伝票や注文書などを見ながら、倉庫内のあちこちから商品を集めます。集めた商品は検品担当に送られ、検品や梱包のプロセスに入る流れです。
ピッキングの方法は、摘み取り方式(シングルピッキング)と種まき方式(トータルピッキング)に大別されます。
摘み取り方式は、棚の前を作業員が歩き、出荷伝票に記載のある商品を順番にピックアップしていくのが特徴です。
種まき方式は、作業員が手元の商品を配って回る方式です。最初に商品を棚からピックアップし、出荷先が記された台車やかごに振り分けます。
梱包・ラベル貼り
梱包は、商品を配送できる状態にする作業です。ピッキングした商品を緩衝材などで包む作業は「内装」、内装された商品を段ボールや袋などに詰め込む作業は「外装」と呼ばれます。
商品の大きさや形状はさまざまで、中には梱包がしにくいものもあります。輸送中の衝撃で商品が破損しないように工夫すると同時に、見た目にも気を配らなければなりません。
梱包後は、配送伝票を貼り付ける「ラベル貼り」を行います。単純作業と思われがちですが、スピードと正確さが求められる重要な工程です。
倉庫作業員の収入と働き方
単純作業が多いことから、倉庫作業員の収入は低いというイメージを持つ人もいるかもしれません。雇用形態や収入の目安、キャリアアップの可否などについて解説します。
主な勤務先と雇用形態
倉庫作業員として働くのに、学歴や資格は問われません。厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「jobtag」によると、倉庫作業員の学歴は高卒が最多となっています。勤務先は、倉庫会社・運送会社・港湾運送会社などが中心となるでしょう。
雇用形態は、パート・アルバイト・派遣社員などの非正規雇用が半数以上を占めます。ほかの職種に比べて時間調整が比較的容易なため、家庭やプライベートとの両立も可能です。
ただし、輸出入貨物を扱う会社では、船の入出港に合わせて作業をしなければならず、時間外労働が多くなる傾向にあります。
出典:倉庫作業員 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
平均年収は400万円を下回る
厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「jobtag」によると、2023年度における倉庫作業員の平均年収は、393万6,000円でした。ハローワーク求人統計データの求人賃金は、21万5,000円です。
年収は、雇用形態や地域によって大きく変わるため、実際の求人情報を確認することをおすすめします。
国内最大級の仕事・求人情報一括検索サイト「スタンバイ」を活用すれば、最新の求人をさまざまな条件で絞り込んで検索できます。
未経験OKや学歴不問の求人も多数あるため、1日でも早く仕事を見つけたい人や新たな職種に挑戦したい人は、ぜひチェックしてみましょう。
出典:倉庫作業員 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
経験を積めばキャリアアップが可能
ルーティンワークが基本の倉庫内作業は、キャリアアップが難しいと思われがちです。自分の仕事の幅を広げたい人は、以下のような資格を取得しましょう。
- フォークリフト運転技能者
- 玉掛技能者
- 危険物取扱者
また、倉庫業者に対しては、「倉庫管理主任者」の選任が義務付けられています。倉庫作業員として経験を積んだ後、倉庫管理主任者講習を修了できれば、倉庫管理主任者として監督的な立場を任される可能性があるでしょう。
出典:倉庫管理主任者講習について|一般社団法人 日本倉庫協会
倉庫作業員に将来性はある?
新しい職種に挑戦する際に、多くの人が気になるのが「将来性」です。今後は、AIに代替される仕事も出てくるため、需要が高い職種を選びたいと考えるのは当然といえるでしょう。倉庫作業員に将来性はあるのでしょうか?
倉庫業界は人手不足の傾向
倉庫業界は、今後の成長が見込める業界の1つです。ECサイトの利用者の増加に伴い、倉庫作業員の需要も増えています。
機械化や自動化が進むものの、EC市場の拡大や労働人口の減少によって、深刻な人手不足が生じているのが現状です。
多くの店舗は、「1秒でも早く商品を顧客に届けること」を目指しているため、貴重な戦力である倉庫作業員の需要は高く、今後も大きく低下することはないと考えられます。
技術進化で業務の一部が自動化される
倉庫作業員の需要は高いといえるものの、デジタル技術の進化によって業務の一部が自動化される可能性があります。これまで、ロボットの導入は、人の手で行うのが難しい危険な作業や、正確に繰り返す必要がある作業などに限られていました。
近年は、AI(人工知能)を搭載したロボットが開発されており、より複雑な作業も可能となっています。将来的には、人間とロボットの協働作業が当たり前になるでしょう。
いずれは、ロボットが反復的な作業を担い、人間は高度な判断を要する作業を行うようになります。倉庫作業員として長く働くためには、管理者としてのスキルも磨いていくことが重要です。
倉庫作業員で活躍できる人とは?
どのような職種にも向き・不向きがあります。倉庫作業員として活躍できる人の特徴を見ていきましょう。
ルーティンワークを丁寧にこなせる人
倉庫作業は単純作業の繰り返しなので、ルーティンワークが苦にならない人に向いています。作業は単純であるものの、正確さとスピードが求められるため、雑な人や飽きっぽい人、責任感がない人には務まりません。
また、大小さまざまな荷物が保管される倉庫内は、転落・転倒・荷物の落下といった危険と隣り合わせです。大きな荷物の運搬中に転倒すれば大事故につながる可能性があるので、危機管理能力や注意力の高さも求められるでしょう。
体力に自信がある人
倉庫内作業は体力勝負です。1日中立ちっぱなしで動き回ることも多いため、体を動かすのが好きな人や体力に自信がある人に向いています。
ただし、立ち仕事は時間がたつにつれて徐々に慣れるものです。最初は筋肉痛に悩まされるかもしれませんが、次第に体が順応するでしょう。
倉庫内は、オフィスに比べて労働環境が厳しいのがデメリットです。温度が一定に保たれているとは限らず、夏の暑さや冬の寒さに耐えなければならない職場もあります。健康管理がしっかりできなければ、体調を崩してしまうかもしれません。
物流業界には倉庫作業員が不可欠
倉庫作業員は、倉庫内のあらゆる作業に携わる職種です。流れ作業による分業制が基本で、特別な資格は必要とされないため、未経験者でも採用されやすいでしょう。
「キャリアアップのチャンスが少ない」「将来性が低い」という声があるものの、倉庫作業員の需要は安定しており、今後も仕事がゼロになることはないと考えられます。
フォークリフトの資格を取得したり、管理者としてのスキルを磨いたりして、自分を高めていきましょう。